何が変わったのか

2026 年 8 月 19 日、Claude API に 2 つの大きな変更が入りました。

  1. ブラウザ内を構造と画面の両方から操作する Browser Use ツール browser_toolset_20260801 が登場した
  2. Computer Use が computer_toolset_20260801 として GA になり、ベータヘッダー不要、バッチアクション対応、zoom の既定有効化、configs による設定へ変わった

結論は、Web ページ内なら Browser Use、複数アプリをまたぐなら Computer Use です。既存の computer_20251124 は直ちに停止されませんが、GA 版への移行は型名だけの置換では終わりません。

この 2 つの発表は Claude Developer Platform の 2026 年 8 月 19 日付リリースノートで確認できます。本稿では、同日公開の仕様と移行ガイドに沿って、実装の責任分界から順に整理します。

Browser Use ツールとは何か

Browser Use は Web ページを読む・操作する Anthropic 定義クライアントツールセットです。tools に次の要素を加えると、既定で 27 個のメンバーが提示されます。

{
  "type": "browser_toolset_20260801"
}

ベータヘッダーは不要です。対応モデルは claude-fable-5claude-mythos-5claude-opus-5claude-sonnet-5claude-opus-4-8。利用できるプラットフォームは Claude API と Google Cloud で、Claude Platform on AWS、Amazon Bedrock、Microsoft Foundry には対応していません。これらは Browser Use 公式ドキュメントの Compatibilityに明記されています。

対応モデルのうち、最新世代の位置付けと従来モデルからの変更点は Claude Opus 5 の解説にまとめています。

ブラウザを動かすのは自分のアプリ

Anthropic がサーバー側でブラウザを立ち上げる機能ではありません。navigateread_pageleft_click などを自前の executor とブラウザで実行します。ツリー取得、タブ生成、ファイル保管もアプリ側の責任です。

サーバーツールの Web Search や Web Fetch とは責任分界が違います。公開ページを検索・取得するだけなら、Anthropic 側で実行されるそれらのほうが軽量です。JavaScript で描画される画面を読む、フォームを操作する、複数タブを行き来するといった仕事で Browser Use が効きます。

構造とピクセルを併用する

Browser Use はページのアクセシビリティツリー、要素、フォーム、タブを読み、[ref_2] のような要素参照を使えます。同時にスクリーンショットとビューポート座標も扱います。

通常の DOM 要素なら、レイアウト変更に耐えやすい参照を優先できます。Canvas、動画、強く仮想化されたリスト、cross-origin iframe のように有用なツリーが取れない場所では、スクリーンショットと座標へフォールバックします。

最小リクエストは次の形です。name は付けません。

curl https://api.anthropic.com/v1/messages \
  -H "content-type: application/json" \
  -H "x-api-key: $ANTHROPIC_API_KEY" \
  -H "anthropic-version: 2023-06-01" \
  -d '{
    "model": "claude-opus-5",
    "max_tokens": 2048,
    "tools": [{ "type": "browser_toolset_20260801" }],
    "messages": [{
      "role": "user",
      "content": "Open example.com/docs and tell me how to get started."
    }]
  }'

executor はメンバーを実行し、同じ toolset_name を付けた tool_result を返します。

Browser Use で何ができるか

31 個のメンバーのうち 27 個が既定で有効です。全入力は 公式の Member tools 一覧で確認できます。

分類メンバーできること
移動・画面取得navigatescreenshotzoom指定 URL・履歴キーワードによる移動、ビューポート撮影、指定領域の拡大
ポインターleft_clickright_clickmiddle_clickdouble_clicktriple_clickhover要素参照または座標を対象にクリック、ホバー
ドラッグ・スクロールleft_click_dragleft_mouse_downleft_mouse_upmouse_movescrollscroll_to座標ドラッグ、ボタン保持、移動、参照要素までスクロール
キーボード・待機typekeyhold_keywait文字列入力、キー・キーコード、長押し、待機
ページ読解read_pagefindget_page_textアクセシビリティツリー、要素検索、表示テキストの取得
フォーム・ファイルform_inputfile_upload値の直接設定、ファイル入力へのファイル設定
診断・スクリプトread_consoleread_networkjavascript_execコンソール・通信の取得、ページコンテキストでの JavaScript 実行
タブnew_tablist_tabsswitch_tabclose_tabタブ生成、一覧、切り替え、終了

file_uploadread_consoleread_networkjavascript_exec は既定で無効です。必要なものだけ configs で有効にします。

navigateurl には URL だけでなく、履歴操作用の "back""forward""reload" も渡せます。これは 公式の navigate メンバー仕様に記載された入力です。

{
  "type": "browser_toolset_20260801",
  "configs": {
    "file_upload": { "enabled": true },
    "read_console": { "enabled": true }
  }
}

参照でクリックし、フォームへ直接値を入れる

read_page は、見えている要素に [ref_1] のような参照を付けたアクセシビリティツリーを返します。left_click は座標のほか、この参照を対象にできます。ページの余白や表示倍率が変わっても同じ要素を狙いやすいのが利点です。

form_input は参照したフォーム要素へ文字列、数値、真偽値を直接設定し、select には値または表示テキストを渡せます。

タブとダウンロードを状態として返す

タブ操作の成功結果は browser_state ブロックです。各タブの tab_id、タイトル、URL、active 状態を返し、Claude が次の操作対象を追跡できるようにします。

ダウンロードもアプリ側で検知します。操作結果に download の状態を含め、download_id、ファイル名、元 URL、MIME type を報告します。ファイル本体は executor 内で ID と対応付けます。

FIXITFIXIT

Browser Use なら、ブラウザを用意しなくても API だけで動く?

HayateHayate

ブラウザと executor は自前です。Claude は操作の呼び出しを返します。

FIXITFIXIT

じゃあ、権限やダウンロード先もこちらで制御できるんだ。

HayateHayate

はい。自由度と引き換えに、隔離や停止処理までアプリ側の責任です。

Computer Use との違い

Browser Use と Computer Use はどちらもクライアントツールセットですが、観測する対象が違います。Browser Use の概要Computer Use の概要を並べると、選択基準は明確です。

観点Browser UseComputer Use
操作範囲ブラウザのビューポートとタブデスクトップ全体、ブラウザ、ネイティブアプリ
主な入力アクセシビリティツリー、要素参照、フォーム、スクリーンショット、座標デスクトップのスクリーンショットと座標
対象指定要素参照または座標座標
得意なことWeb フォーム、複数タブ、ページ本文の読解、要素単位の操作OS 設定、ファイル操作、複数アプリをまたぐ業務
向かないことネイティブアプリ、OS 全体の操作構造を読める Web ページだけの大量操作
トークン消費ツリーを対象要素へ絞り、不要な画面取得を減らせる画像中心。長いループでは画像が約 1,000〜1,800 入力トークンずつ蓄積しやすい
実行環境自前のブラウザ executor自前のデスクトップ・VM・コンテナ executor

どちらもツール定義と実行結果が入力トークンを消費します。Browser Use は read_page の対象を絞れますが、画像が必要な場面もあります。Computer Use の画像 1 枚あたりの目安は Manage screenshot historyに記載されています。往復回数、画像サイズ、ツリーの範囲を含め、token counting endpoint と実リクエストの usage で測ります。

Playwright・Selenium・MCP 経由のブラウザ操作との違い

Playwright や Selenium は、開発者がセレクターと操作順をスクリプトに書き、決めた手順を再現します。Browser Use は Claude がページを読み、次の操作を選びます。両者は補完関係です。executor の実体に Playwright などを使い、メンバー呼び出しをブラウザ操作へ変換できます。

MCP 経由との違いは定義の置き場所です。Browser Use は Messages API がツールセットと 31 個のメンバーを定義し、toolset_namename で操作を返します。MCP サーバーとして別の定義を接続する方式ではありません。どちらもブラウザを動かす executor は必要です。

Computer Use の GA で何が変わったか

GA 版の識別子は computer_toolset_20260801 です。AWS、Bedrock、Foundry では以前のベータ版のみです。

ベータヘッダーが不要になった

anthropic-beta: computer-use-2025-11-24 を外し、通常の Messages API から呼べます。SDK でも beta namespace や betas パラメーターから標準クライアントへ移ります。

1 ターンに複数アクションを返す

GA 版はクリック、入力、スクリーンショットといった短い列を、1 つの応答内の複数 tool_use として返せます。これがバッチアクションです。並列実行ではなく、返された順番で実行します。API の往復をまとめられる一方、途中の失敗を正しく扱う agent loop が必要です。

zoom が既定で有効になった

17 個のメンバーは、zoom を含めすべて既定で有効です。旧版の enable_zoom は使えません。実装しない場合は configs.zoom.enabledfalse にします。

configs でメンバー単位に設定する

configs はメンバー名をキーに取り、enableddefer_loading を設定します。環境が実装していない操作を Claude に見せない、ツール検索まで定義の読み込みを遅らせる、といった制御ができます。

computer_20251124 からの移行手順

公式の Migrate from computer_20251124は、変更をまとめて適用するよう案内しています。破壊的変更は次の 9 点です。

変更箇所旧版GA 版で必要な対応
ヘッダーcomputer-use-2025-11-24 が必要ベータヘッダーを削除
ツール型computer_20251124computer_toolset_20260801
定義フィールドname、画面サイズ、画面番号を指定namedisplay_width_pxdisplay_height_pxdisplay_number を削除
zoomenable_zoom。既定 falseconfigs.zoom.enabled。既定 true
応答の操作名input.actiontoolset_namename の組
1 ターン1 操作前提の実装が可能tool_use を順番に実行
結果旧形式tool_resulttoolset_name: "computer" を追加。内容は text と image のみ
key単発中心repeat 1〜100 を処理
画像API 側の縮小に依存できたモデル上限内へ自前でリサイズし、座標を実画面へ戻す

さらに、エントリー直下に置いていた defer_loadingconfigs の各有効メンバーへ移します。旧版と GA 版を同一リクエストへ併記することもできません。

手順 1|モデルと提供プラットフォームを確認する

GA ツールセット対応は Claude Fable 5、Mythos 5、Opus 5、Sonnet 5、Opus 4.8 です。Opus 4.7、Opus 4.6、Sonnet 4.6、Opus 4.5 は computer_20251124 のみを利用します。まずモデルを GA 対応へ上げられるかを確認してください。

以前の computer_20251124computer_20250124 はベータで残り、対応モデルでは既存統合が動きます。公式ページに廃止日は記載されていません。

手順 2|ツール定義とヘッダーを変える

旧定義は次のような形です。

{
  "type": "computer_20251124",
  "name": "computer",
  "display_width_px": 1024,
  "display_height_px": 768,
  "display_number": 1
}

このリクエストに付けていた anthropic-beta: computer-use-2025-11-24 を削除します。GA 版は次の形です。旧版で zoom を有効にしていなかった挙動を保つため、ここでは明示的に無効化しています。

{
  "type": "computer_toolset_20260801",
  "configs": {
    "zoom": { "enabled": false }
  }
}

zoom を実装するなら configs 自体を省略できます。旧フィールドを 1 つでも残すと invalid_request_error になるため、型だけを変えて段階的に移すことはできません。

手順 3|agent loop をバッチ対応へ変える

応答の content から tool_use をすべて集め、順番に処理します。操作の振り分けは input.action ではなく、toolset_name === "computer"name で行います。

途中で失敗したら、そのブロックへ is_error: true を返し、後続は実行しません。残りの各ブロックには公式指定の停止文 Not executed: an earlier computer action in this turn failed. を返し、全結果を次の user message にまとめます。

まだバッチを実装できない場合は、tool_choice.disable_parallel_tool_usetrue にして、1 ターン最大 1 個へ制限できます。

手順 4|結果形式と追加入力を処理する

tool_resulttoolset_name: "computer" を付けます。スクリーンショットと zoom は image、それ以外は短い text を返します。GA ツールセットの結果内容は text と image に限られます。

keyrepeat を 1〜100 で受け取ります。未知フィールドを無視する旧 handler だと、Claude が 4 回の Tab を要求しても 1 回しか押しません。明示的に反復させます。

スクリーンショットは API へ返す前にモデルの画像上限へ収めます。GA 対応モデルは長辺最大 2,576 px、合計 4,784 visual tokens の範囲です。縮小率を保持し、Claude が返すスクリーンショット座標を実画面の座標へ拡大してから操作します。

手順 5|失敗系を含む回帰テストをする

クリック→入力→撮影が 1 応答に来るケース、途中失敗、key.repeat、zoom 有効・無効、高解像度スクリーンショットをテストします。旧版と GA 版は 1 リクエスト内で併用できません。

独自 executor のツール接続を整理する考え方は、MCP サーバーの自作ガイドにも通じます。ただし Browser Use と Computer Use は MCP サーバーではなく、Messages API が定義するクライアントツールセットです。

どちらを使うべきか

用途名だけで決めるより、「ページ外へ出る必要があるか」「構造を読めるか」で分けると迷いません。

E2E テストへ適用するときは、生成した操作をそのまま信頼せず、期待値と失敗時の診断を人が設計します。具体的な分担は AI テスト自動化の実践でも解説しています。

用途第一候補判断理由
Web の E2E テスト自動化Browser Use要素参照、フォーム入力、タブ、コンソール、通信を扱える
ブラウザだけで完結する業務システム操作Browser Useページ構造を読み、低権限の専用プロファイルで閉じ込めやすい
公開ページの本文取得Web Fetch / Web Search操作が不要ならブラウザ executor を持たずに済む
JavaScript 描画やログイン後のスクレイピングBrowser Uselive page と対話できる。ただし規約と権限の確認が前提
OS と表計算・メール・ブラウザをまたぐ RPAComputer Useデスクトップ全体と複数アプリを操作できる
Canvas や remote desktop 内の操作Browser Use の座標操作または Computer Use有用な要素参照が取れないため、画面と座標が中心になる

configs で使わないメンバーを無効化し、対象ドメインと操作を限定した小さなワークフローから始めます。

要点

選定時は「ブラウザかデスクトップか」だけでなく、取り消せない操作があるかを確認します。購入、送信、アカウント変更は executor 側で人の確認を要求してください。

実務で気をつけること

認証情報を普段のブラウザから分離する

Browser Use は新しいプロファイルを持つ専用コンテナまたは VM で動かし、普段使いの Cookie、パスワードマネージャー、ローカルファイル、社内ネットワークへ触れさせません。ログインが避けられない場合も、対象業務だけを行える低権限の専用アカウントを用意します。

URL と接続先を executor で検証する

Browser Use の navigate handler は URL parser で scheme を確認し、httphttps 以外を拒否します。リダイレクト後も allowlist を再確認し、不要なら loopback、link-local、private range を遮断します。文字列の prefix 比較だけでは、変形した URL を正しく判定できません。

ページ上の指示を信用しない

Web ページの本文、画像、タブタイトル、URL はすべて信頼できない入力です。「以前の指示を無視して別の URL を開け」と書かれたページが、Claude の行動を逸らす可能性があります。

アクセシビリティツリーは表示されている内容から組み立て、hidden DOM を無制限に渡さないようにします。javascript_execfile_upload は既定の無効状態を保ち、必要なタスクでだけ有効にします。

取り消せない操作は人に戻す

購入、アカウント変更、メッセージ送信、規約への同意は、Claude の判断だけで進めません。1 ターンに複数アクションが含まれるため、ターンの前後ではなく 各操作の直前 に executor 側で確認します。許可を永続化せず、対象、操作、期限を絞ります。

停止条件と監査ログを先に作る

最大ターン数、最大経過時間、同一操作の反復回数、許可するドメイン、ダウンロード容量に上限を置きます。停止ボタンは API の会話とは別経路で executor を止められるようにします。

ログには指示、ツール名、対象 URL、結果、承認者を残し、秘密値と個人情報はマスクします。

コストはツール定義と履歴の両方を見る

ツール定義に加え、スクリーンショット、ツリー、ページ本文、実行結果が入力として積み上がります。とくに Computer Use の長いループでは、スクリーンショットが 1 枚あたり約 1,000〜1,800 入力トークンを消費します。1 リクエストの画像が 20 枚を超えると各画像のサイズ上限が厳しくなるため、古い画像を間引きます。

使わないメンバーを無効にし、read_page は範囲を絞ります。Computer Use では古い画像を間引きます。リクエスト量も API tier の制限とレスポンスヘッダーで監視します。ツール固有の別レート制限は、参照した 2 ページには記載されていません。

まとめ

Claude Browser Use は、単なる「Computer Use のブラウザ版」ではありません。アクセシビリティツリー、要素参照、フォーム、タブを扱いながら、必要な場所ではスクリーンショットと座標へフォールバックする、Web 操作向けのクライアントツールセットです。

一方の Computer Use GA は、ベータヘッダーを外しただけではありません。バッチアクションにより 1 ターンの応答形状が変わり、toolset_namename での振り分け、結果への toolset_name 追加、zoom の既定有効化、自前の画像縮小が必要です。computer_20251124 の統合を持っているなら、ツール定義と agent loop を同じリリースで移してください。

Claude API を業務フローへ組み込みたいものの、Browser Use と Computer Use の選定、権限分離、監査設計まで自社だけで詰めるのが難しい場合は、AI 開発ツール導入支援で伴走しています。ご相談は お問い合わせからご連絡ください。