冒頭の KV は制作の振り返りを表した説明イラストです。本文の比較画像には、今回保存した制作物を掲載しています。

銀白色の髪、紫の瞳、ヘッドセット。キャラクターの特徴は入っているのに、原画と並べると別の顔に見える。今回の 3D 制作で、最後まで解決できなかった問題です。

題材は、執筆者キャラクターの hayate。既存のイラストをもとに、AI エージェントと Blender でモデルを作り、その後、画像から 3D を生成する Tripo も試しました。全身のモデルを画面で確認するところまでは到達しましたが、「原画と同じキャラクターに見える」という依頼の基準を満たせませんでした。

この記事では、完成しなかった過程を振り返り、何がうまくいかなかったのかを整理します。モデルの品質を上げる実作業と、その結果の比較は次回に扱います。記録の整理日は 2026 年 9 月 8 日です。対象はキャラクター 1 体であり、各サービスの総合性能を順位づけする検証ではありません。Pixal3D は調査した段階で、生成はまだ試していません。

最初に、何ができて何ができなかったのか

今回の目的は、既存キャラクターを 3D で再現することでした。題材は執筆者 hayate のイラストです。単に人型を生成するだけでは、目的を達成したことになりません。検証の合格基準を先に決める考え方は、AI エージェントの PoC 設計 とも共通します。

試したこと確認できた結果残った問題
Blender で胸像・頭部を制作編集可能なモデルと比較用のレンダリングを作成目、顎、髪の輪郭が原画と異なる
固定アングル向けの浅いレリーフを制作原画の構図を意識した形状比較が可能全方向から成立する人体の立体構造ではない
ImageGen で全身画像と三面図を生成3D 生成用の参照画像を用意原画にない下半身・背面を新たに補っている
Tripo v3.1 で単一画像から生成全身モデルをサービス内で確認原画の顔への忠実さが不足し、書き出しも未完了

Blender の制作物と Tripo の結果は、同じ条件での性能比較ではありません。途中で胸像から顔へ、さらに全身へと制作範囲を変え、Tripo には原画そのものではなく、ImageGen で作った全身画像を渡しています。

この違いを記録しないと、入力や目的の変更による差まで、生成モデルの性能差に見えてしまいます。

顔の特徴を列挙しても、似た顔にはならなかった

最初は Blender で、顔、髪、ヘッドセット、衣装の形状をコードから組み立てました。続いて顔だけに範囲を絞り、目や口の位置、頭部の向き、輪郭を調整しています。

それでも、原画と比較した結果は合格にできませんでした。

原画の顔と Blender で制作した顔の比較。左が原画、右が制作物

左が原画、右が顔の再制作結果です。髪色と瞳の色は近くても、右は目の開き方や虹彩の見え方が異なり、顎や頬の形、口元の表情にも差があります。前髪の分かれ方や顔へのかかり方も一致していません。

今回の比較から得た教訓は、「紫の瞳」「銀髪」といった特徴の有無だけで合格にしないことです。顔では、目の幅と高さ、目尻の角度、左右の目の距離、顎までの長さを組み合わせて確認する必要がありました。

また、形状の差と見せ方の差を分けるべきでした。カメラの向き、画角、照明が違えば、同じ立体でも輪郭や陰影の見え方が変わります。次回は原画に近い向きと顔の大きさで比較し、目、口元、輪郭、髪の順に修正箇所を確かめる方針です。

固定アングル用の浅いレリーフも試しましたが、原画の構図に寄せる試みと、回転させても成立するキャラクターモデルの制作は、完成条件が異なります。正面の画像だけを見せて「3D キャラクターが完成した」と扱うべきではありませんでした。

全身画像を作った時点で、再現と新しいデザインが混ざった

元の参照画像は、顔と上半身を中心に描いたイラストです。全身を 3D 化するため、ImageGen で足先まで写った画像を作りました。

ImageGen で作成した hayate の正面全身画像

白と紫のジャケットを引き継ぎつつ、黒いパンツや靴まで追加した画像です。原画に描かれていない部位には、再現の正解となる情報がありません。下半身は原画を参考に補ったデザインとして扱います。

ここで、評価すべき対象が増えました。

  1. 原画と、生成した全身画像の顔が似ているか。
  2. 全身画像と、そこから作った 3D モデルが似ているか。
  3. 補った服装や背面が、キャラクターのデザインとして適切か。

全身画像の顔が原画から変わっていれば、3D モデルが全身画像を忠実に再現しても、その顔は原画と一致しません。今回の結果を Tripo だけの問題と断定できない理由です。

次に同じ制作をするなら、全身画像を作った直後に顔を拡大し、原画と比較します。その段階で似ていなければ、3D 生成に進む前に参照画像を直す必要があります。

三面図を用意しても、マルチビュー生成を試したことにはならない

正面、側面、背面を並べた三面図も ImageGen で作成しました。

正面・側面・背面を並べた hayate の三面図

ただし、今回のアカウントで Tripo のマルチビュー入力を使おうとすると、アップグレードの案内が表示されました。そこで、利用できる範囲の機能を使う方針に変え、単一画像から生成しています。

したがって、今回の記録から「三面図を入力しても品質が上がらなかった」とは言えません。三面図は準備しましたが、複数方向の画像を条件として与える生成は実施していないためです。

三面図を使う場合も、生成画像の整合性を確認する工程は必要です。正面と背面で衣装の装飾が食い違っていないか、頭身や肩幅がそろっているかを見ます。複数の絵があることと、同じ立体として矛盾なくつながることは、別々に確認すべきでした。

最初の Tripo 生成は、入力画像の切り出しミスだった

Tripo での最初の失敗には、はっきりした作業上の原因がありました。

三面図から正面を切り出したつもりが、実際のファイルには中央の側面が写り、左右に別ビューの腕も入っていました。生成を担当した AI エージェントが画像の中身を目視確認しないままアップロードし、余分な腕を含む結果になっています。

この生成に使った 55 クレジットは、正しい入力での品質検証に使えませんでした。3D 生成サービスの性能を評価する以前に、入力検査で防げた失敗です。

次の試行では、切り出し画像の使用をやめ、正面全身画像をそのまま渡しました。アップロード後のプレビューで、人物が 1 人だけ写っていることを確認してから生成しています。

以後の入力確認では、ファイル名だけに頼らず、次の項目を実画像で確かめます。

  • 指定した向きの人物が写っているか。
  • 隣のビューの腕や髪が混ざっていないか。
  • 頭頂、手、足先が意図せず切れていないか。
  • サービス内の入力プレビューが、手元で確認した画像と同じか。

失敗を記録するときも、入力の不備、生成結果の不備、操作の不備を分けます。作業ミスまでまとめて「AI の品質が低い」とすると、次に直す箇所を誤ります。成果物が依頼の意図に合っているかを人が確かめる役割は、AI 生成コードのレビュー設計 でも扱っています。

約 198 万の三角形があっても、原画の顔は再現できなかった

修正版の入力では、Tripo の HD Model、v3.1、Geometry & Texture を使い、全身の生成が完了しました。パーツ別生成や 8K テクスチャは使っていません。

Tripo 内に表示された hayate の全身モデルと入力画像

画面上では、銀白色と紫の髪、白と紫の上着、黒いパンツを持つ全身モデルを確認できました。表示された形状の数は、1,981,182 三角形、1,030,575 頂点です。

ただし、依頼者による見た目の評価は、原画を再現するには品質が足りないというものでした。全身モデルとして成立したことは成果ですが、原画の顔に似せるという目的は未達です。

三角形の数は、形状をどれだけ細かく分割しているかを示します。その数だけでは、目や顎が原画に合っているかを判断できません。今回も、形状の細かさを示す表示を、キャラクター再現の合格判定に使うことはできませんでした。

なお、保存したスクリーンショットは全身表示です。顔の細部を定量評価できる解像度や、一定条件の複数方向レンダリングはそろえていません。「目の位置が何パーセントずれた」といった数値評価は、この記録からは出せません。

生成できても、Blender に持ち出せるとは限らなかった

修正版の生成には、追加で 55 クレジットを使いました。最初の誤入力と合わせて、消費は 110 クレジットです。これは今回の操作記録であり、現在の全ユーザーに適用される固定料金を示すものではありません。

その後、GLB 形式で書き出そうとすると、有料プランへの案内が表示されました。契約は追加していないため、Tripo のモデルはダウンロードできていません。生成結果はサービス内で確認した段階にとどまります。

このため、Tripo の出力を Blender へ読み込む検証、メッシュの修正、リグの設定、アニメーションの確認も未実施です。先に作った Blender のモデルとは、別の成果物として管理しています。

次回は生成を始める前に、必要なモデル形式を今のプランで書き出せるかまで確認します。「生成できる」「画面で見られる」「編集ソフトに渡せる」を、それぞれの到達点として記録する方針です。

パーツを分ければ改善するのか

制作途中には、頭、髪、体を別々に作る案も出ました。顔を優先して直したい今回の用途では、検証する価値があります。ただし、パーツを分けて生成し、結合するところまでは試していません。

頭部を独立した入力として大きく見せれば、全身画像では小さくなる顔の情報を渡しやすくなると考えられます。また、体が採用可能なら、顔の修正だけのために全身を作り直す必要も減らせそうです。いずれも、今回まだ確かめていない改善仮説です。

一方で、別々に作った頭と体の大きさ、首の接続、髪と頭皮の位置、色や質感を合わせる作業が発生します。パーツ単体の見た目が良くても、組み立てたキャラクターが自然になるとは限りません。

次の試行では、まず頭部だけで原画への忠実さを確認するのが妥当と考えています。頭部が原画に似ていると確認できた段階で、体との接続や全身の見え方を検証します。

「最新で一番いいモデル」の選び方にも問題があった

代替の公開モデルを探す過程では、AI エージェントが先に TRELLIS.2 などを推薦しました。しかし、依頼者から最新情報を確認しているのか問われた後、2026 年公開の Pixal3D を候補から落としていたことが分かりました。

Pixal3D の公式リポジトリには、2026 年 5 月の公開と、9 月のマルチビュー推論コード追加が記載されています。画像の特徴と 3D の位置を直接対応づける設計で、現在の実装は TRELLIS.2 を基盤としています。原画への忠実さを優先する今回の用途では、次に試す候補に選びました。Pixal3D 公式リポジトリ

ただし、公開されている論文の比較対象には TripoSG などが含まれるものの、今回使用した商用 Tripo v3.1 や、候補に挙がった P2 との直接比較ではありません。論文の実装と現在の実装にも違いがあります。研究上の評価だけで「hayate の顔が最も似る」と結論づけることはできません。Pixal3D 論文

今後のモデル選定では、公開日だけでなく、実行可能なコードと重みがあるか、評価対象が何か、同じ入力で比較しているかまで確認します。最新候補を調べたことと、その候補が制作対象で最良だと確かめたことを分けて報告します。

今回はここまで。品質を上げる実作業は次回へ

今回、全身の 3D モデルを表示するところまでは到達しました。それでも、依頼の中心だった「原画と同じキャラクターに見える」という基準は満たせていません。

振り返ると、原画から全身画像を作る段階の顔の変化、切り出した入力画像の検品不足、形状の細かさと似ている度合いの混同がありました。書き出しの利用条件も、生成前に確認しておくべきでした。生成モデルの変更だけでは解決しない、制作の進め方の問題も含まれています。

次回は、ここで残った課題をもとに、実際にモデルの品質を上げる作業に取り組みます。顔を優先して直す方法や、パーツを分ける方法、Pixal3D など別モデルの利用を候補として、何から試すかを決めます。

次回の生成結果を、今回の結果と原画に並べて比較し、改善の有無を確かめる予定です。「新しいモデルを使った」「パーツを分けた」という作業の報告だけで終わらせず、見た目がどう変わったか、変わらなかったかまで残します。

この記事で示せるのは、原画の再現に届かなかった現在地と、そこまでの失敗から得た教訓です。改善の結果は、次回の検証で報告します。