はじめに — 「速いモデル」の枠に収まらなくなった

2026 年 6 月 30 日、Anthropic が Claude Sonnet 5 を公開しました。Sonnet 系は「速くて安い中位モデル」という位置づけで語られてきましたが、今回はその枠に収まりません。公開時点の最上位である Opus 4.8 に一部のベンチマークで並び、ターミナル操作では上回っています。

しかも料金は据え置きです。単価が変わらないまま性能が上がったので、同じ予算で得られる成果は実質的に増えます。一方で、乗り換えにあたって見落とすと痛い変更もあります。トークナイザーが新しくなり、同じ文章でもトークン数が増えるためです。

本記事では、Sonnet 4.6 から何が変わったのかを、Anthropic の 公式発表公式ドキュメント をもとに整理します。

ひと目でわかる Sonnet 4.6 → Sonnet 5 の変更点

観点Sonnet 4.6Sonnet 5
料金 (100 万トークンあたり)$3 / $15$3 / $15 (8 月 31 日まで $2 / $10)
Terminal-Bench 2.167.080.4
SWE-bench Pro58.163.2
thinking の既定オフオン
手動の拡張思考非推奨だが動作廃止 (400 エラー)
サンプリングパラメーター設定可能既定値以外は 400 エラー
effortlow〜maxlow〜max (xhigh が追加)
トークナイザー従来新方式 (同じ文章で約 30% 増)
コンテキスト100 万トークン100 万トークン (既定かつ上限)

ベンチマーク — 前世代の最上位に肉薄した

公開時のシステムカードで示された主な数字は次のとおりです。比較対象は前世代の Sonnet 4.6 と、当時の最上位である Opus 4.8 です。

ベンチマークSonnet 4.6Sonnet 5Opus 4.8
Terminal-Bench 2.167.080.474.6
SWE-bench Pro58.163.269.2
Humanity's Last Exam (ツールあり)46.857.457.9
OSWorld-Verified78.581.283.4

読み取れる形ははっきりしています。ターミナル操作を測る Terminal-Bench 2.1 では Sonnet 5 が Opus 4.8 を上回り、知識集約的な Humanity's Last Exam でもほぼ並びました。一方、難易度の高いコーディングを測る SWE-bench Pro では 6 ポイントの差が残っています。

つまり「中位モデルが最上位に全面的に追いついた」わけではなく、「領域によっては追い越し、難所ではまだ差がある」という状態です。自社の作業時間が最も長い領域がどちらに寄っているかで、乗り換えの損得は変わります。

補足

ベンチマークの数字はいずれも Anthropic が公開したものです。総合点の高さより、自分たちが最も時間を使う作業と重なっているかを見て判断すると、モデル選びを誤りにくくなります。

料金は据え置き、ただし請求額は動く

Sonnet 5 の料金は 100 万トークンあたり入力 $3・出力 $15 で、Sonnet 4.6 から据え置きです。さらに 2026 年 8 月 31 日までは導入価格として入力 $2・出力 $10 が適用されます。

ただし「単価が同じ = 請求額が同じ」ではありません。後述するトークナイザーの変更により、同じ文章から生まれるトークン数が増えるためです。導入価格の期間中は実感しにくいものの、9 月に標準料金へ戻ると差が表に出ます。恒常的な構成は標準料金で見積もっておくのが安全です。

新しいトークナイザー — 同じ文章で約 30% 増える

Sonnet 5 は新しいトークナイザーを採用しました。同じ入力文でも、Sonnet 4.6 と比べておよそ 30% 多いトークン数になります。増加率は内容によって変わります。

API の形は変わらないのでコード修正は不要ですが、トークン数で測っている値はすべて影響を受けます。影響が出るのは次の 4 か所です。

  1. usage の各フィールドとトークンカウント API の結果が、同じ文章でも増える
  2. 100 万トークンのコンテキストに収まる文章量が実質的に減る
  3. max_tokens を期待する出力長の近くに設定していると、同等の出力が途中で切れる
  4. 単価が同じでも、1 リクエストあたりの請求額が変わる

旧モデルで測ったトークン数を流用せず、Sonnet 5 で測り直してください。特に 3 番目は、移行直後に「なぜか応答が途中で終わる」という形で表面化しやすい落とし穴です。

破壊的変更は 3 点

コードに手を入れる必要があるのは次の 3 点です。いずれも Opus 系では先行して入っていた変更で、Sonnet 系にも揃った形になります。

1 点目は、thinking が既定でオンになったことです。Sonnet 4.6 では thinking フィールドを省略すると思考なしで動いていましたが、Sonnet 5 では思考が有効になります。思考を切りたい場合は thinking: {"type": "disabled"} を明示します。max_tokens は思考と応答テキストを合わせた上限なので、あわせて見直しが要ります。

2 点目は、手動の拡張思考の廃止です。thinking: {"type": "enabled", "budget_tokens": N} は Sonnet 4.6 では非推奨ながら動いていましたが、Sonnet 5 では 400 エラーになります。

{
  "thinking": { "type": "adaptive" },
  "output_config": { "effort": "high" }
}

思考の深さは budget_tokens ではなく、上のように effort で制御します。

3 点目は、サンプリングパラメーターの扱いです。temperaturetop_ptop_k を既定値以外に設定すると 400 エラーになります。既定値のまま渡すか、パラメーターごと外してください。出力の振れ幅を調整したい場合は、システムプロンプトでの指示に置き換えます。

なお、アシスタントメッセージのプレフィルが使えない点は Sonnet 4.6 から変わっていません。出力形式を固定したいときは構造化出力を使います。

effort に xhigh が加わった

Sonnet 系で初めて、effort に xhigh が入りました。low から max までの 5 段階すべてを使えます。API の既定は high です。

段階の目安は、難しいコーディングやエージェント作業が xhigh、多くの用途は既定の high、コストを抑えたい場合は medium です。medium はおおよそ Sonnet 4.6 の high に相当する位置づけとされています。対話や単純な分類のように待ち時間が体感を左右する用途では low まで下げると効きます。

前の世代から設定値をそのまま持ち込んでいる場合は、自社の評価セットで一度振り直すほうが実利があります。

サイバーセキュリティのセーフガード

Sonnet 5 は、Sonnet 系で初めてリアルタイムのサイバーセキュリティ関連セーフガードを備えたモデルです。禁止されている領域や高リスクの話題を含むリクエストは拒否される場合があります。

実装側で注意したいのは、拒否がエラーではなく成功レスポンスとして返る点です。HTTP 200 で stop_reasonrefusal になります。stop_reason を確認せずに応答本文を読むコードは、拒否時に想定外の動きをします。移行のタイミングで分岐を足しておくと安全です。

FIXITFIXIT
中位モデルなのに最上位に勝ってるの?
TsumikiTsumiki

ターミナル操作だけですね。難しい改修はまだ Opus 系のほうが上です。

FIXITFIXIT
じゃあ料金そのままなら、乗り換えて損はない?
TsumikiTsumiki

はい。ただトークン数が増えるので、請求額は先に測っておくのが早いです。

FIXIT の受け止め — まず何から試すか

整理すると、Sonnet 5 は「料金据え置きのまま、領域によっては前世代の最上位を越えたモデル」です。ターミナル操作を伴う作業や、数をこなす定型的な処理を任せる先として扱いやすくなりました。

乗り換えの第一歩としては、モデル ID を差し替えたうえで、手動の拡張思考とサンプリングパラメーターを使っている箇所を洗い出すところからです。次に max_tokens をトークナイザーの変更を踏まえて見直し、最後に effort を評価セットで振り直すと、据え置きの単価をそのまま活かせます。

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補足

2026 年 7 月 24 日に上位モデルの Claude Opus 5 が公開され、Sonnet 5 との住み分けを考える場面が増えました。どちらに何を任せるかは Claude Opus 5 と Sonnet 5 の使い分け に整理しています。