受託開発会社が AI 駆動開発を導入すると、エンジニアが担当する仕事の配分と、顧客への提案の作り方を見直せます。AI に調査・実装・検証を任せ、人は要件や設計、成果物の確認、顧客との合意に時間を使う体制です。

経営者が判断したいのは、コードを書く速さだけではないはずです。世に出せるものが増えるのか、同じ人数で何本の案件を引き受けられるのか、顧客が本番で使い始める日を早められるのか。さらに、短縮した工数を価格にどう反映するかも経営の判断になります。

本記事では、AI 駆動開発で変わる仕事を 9 つの能力領域に整理します。研修で扱う範囲はプランごとに異なります。AI 駆動開発の定義と、人が設計・レビューを担う考え方は、AI 駆動開発とは何か でも説明しています。

成果は、世に出した数・同時に持てる本数・本番までの日数で測る

AI 駆動開発の導入前に、経営者と開発責任者で成果の数え方を決めてください。確認する指標は次の 3 つです。

指標数え方導入前と比べて目指す変化
世に出した数同じ期間内に、本番で顧客が使える状態にした製品や機能の数を数える完了した数を増やす
1 人が同時に持てる本数担当者が進捗を把握し、レビューと顧客対応まで担える案件数を数える継続して担当できる本数を増やす
着手から本番までの日数合意した着手日から、本番で利用できる日までを記録する提供までの日数を短くする

製品と小さな機能追加は分けて集計し、案件の規模や担当範囲もそろえます。同時に持てる本数は、担当者の名前が割り当てられた件数ではなく、完了に向けて実際に管理できる件数です。

着手から本番までの日数には、顧客の確認や社内レビューを待つ時間も含めてください。実装時間が短くなっても、本番での利用開始が早まっていなければ、待ち時間の内訳を確かめる必要があります。

9 つの能力領域で、仕事の変化を捉える

9 領域は特定の技術スタックに依存せず、AI に何を任せ、人が何を決めるかを整理するための分類です。次の表は、導入後に目指す状態を示しています。

領域できるようになること開発会社で見直す仕事
1. 使い分ける用途に応じてチャット型・IDE 補完型・エージェント型を選ぶ作業ごとに道具と任せ方を決める
2. 覚えさせる自社の規約・ドメイン用語・禁止事項を AI に常時参照させる共通の前提を文書にして管理する
3. 任せる調べものから検証まで、まとまった作業を AI に任せる指示を出す前に完了条件を決める
4. 並べる役割を分け、複数の AI を同時に実行する作業の依存関係と担当範囲を分ける
5. 検証させる人が見る前に AI に自己レビューと自動検証を実行させるチーム共通の確認手順を作る
6. つなぐAI を社内の DB・コード管理・課題管理と接続する参照先と操作権限を決める
7. 読み解く仕様書のない既存システムを調べ、仕様の草案を作る調査結果と未確認事項を分ける
8. 売るAI 活用を前提に見積もり、顧客へ提案する短縮した工数を価格と提案に反映する
9. 載せる自社製品・サービスの AI 機能を企画して組み込む利用者の目的と評価方法を決める

1〜5|個人の操作を、チームで共有できる開発手順にする

「使い分ける」では、相談や論点整理、編集中のコード補完、複数工程にまたがる作業を分けて考えます。作業の目的と完了条件を言語化できれば、担当者は用途に合う型を選べます。

「覚えさせる」は、毎回の指示で社内規約を説明し直す手間を減らすための領域です。規約やドメイン用語、禁止事項を文書にまとめ、作業時に AI が文書を参照する設定を用意します。ここでいう「覚える」とは、モデル自体を再学習させる意味ではありません。文書を更新し、担当者が変わっても同じ前提を AI に渡せる状態を作ることです。

「任せる」には、作業の目的、変更してよい範囲、完了条件の指定が必要です。人は期待する入出力をテストとして先に定義し、AI に調査から実装、検証結果の報告までを任せます。完了条件を満たしたかは、人が報告と成果物を照合して判断してください。

「並べる」では、独立した調査や実装を複数の AI に分担させます。担当範囲に加え、誰が結果を統合するかも先に決めるのが要点です。別の作業の結果が必要な部分は順番に実行し、同時に実行できる部分だけを分けます。

「検証させる」では、テストと AI の自己レビューを、人のレビュー前に組み込みます。AI から修正内容と検証結果を受け取り、人は要件との整合性や設計上の判断を確認する手順です。品質担保のうち繰り返し実行できる確認を自動化し、最終判断の担当者を明確にします。

チームで共有する成果物は、AI が規約を参照する設定、作業指示のひな形、検証手順、レビュー基準です。具体的な仕事への当てはめは、開発会社での Claude Code 活用例 も参照してください。

6・7|社内情報を参照し、既存システムの説明を作る

「つなぐ」と「読み解く」は、開発に必要な情報をそろえるための能力です。情報収集に使う時間も、着手から本番までの日数に含まれます。

「つなぐ」では、必要な接続を設定し、AI が社内の DB・コード管理・課題管理から情報を参照できる状態を作ります。課題の背景や関連コードを人が転記する代わりに、参照してよい情報源を指定する運用です。情報を読む権限と書き換える権限を分け、必要な操作だけを許可します。

「読み解く」では、AI がコードや設定、テストを調べ、既存システムの構造や業務上の処理を説明する仕様書の草案を作ります。コードから確認できた挙動と、利用部門への確認が必要な業務ルールは分けて記録してください。AI の調査結果を、人が仕様として確定させる手順です。

仕様書のないシステムでも、調査結果を構成図や処理一覧として共有すれば、改修範囲を関係者で検討できます。見積もりの前提として何が確認でき、何が未確認なのかも顧客に説明しやすくなります。

8|工数の短縮を、値決めと提案に反映する

経営者にとっての核心は「売る」です。AI で開発工数を短縮し、請求する工数も短くすれば、単価と案件数が同じ場合の売上は減ります。

請求額を「工数 × 単価」で決める契約では、請求する工数の減少が、同じ案件の請求額の減少に直結するためです。一方、合意した成果物に対して価格を決める契約では、開発にかかる原価と提案価格を分けて検討できます。AI を使うことで、何を、いつまでに顧客へ提供できるかを具体化する必要があるのです。

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速く作れるなら、その分だけ安く売ることになるの?

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値下げは必須ではありません。提供する機能と期限を判断の軸に、顧客への提案と価格を決めます。

見積もりでは、AI に任せる作業、人が設計・確認する作業、顧客の確認を待つ時間を分けます。すべての工程の所要時間が同じ割合で短くなる前提は置かず、自社で実行した作業の記録から必要な工数を算出してください。ツールの利用料や運用に必要な費用も原価に含めます。

顧客への提案では、次の内容を先にそろえると、金額の根拠を説明できます。

  • 顧客が本番で使えるようになる機能と、その提供時期を示す
  • 提案価格に含む設計・実装・検証・運用支援の範囲を明記する
  • 何をもって完了とするか、誰が確認するかを決める
  • 機能や対象範囲が増えた場合に、価格と日程を見直す条件を示す

短縮した時間を別の案件へ充てるなら、受注見込みとレビュー担当者の余力も確認します。開発できる本数が増えても、受注や顧客への提供が増えなければ、売上の増加にはつながりません。経営者は、開発手順の改善と同時に、何をどの価格で提案するかを決める役割を担います。

自社のコードで手順とレビュー基準を整えたい方は、AI 駆動開発研修の内容・プランをご確認ください

9|自社製品・サービスに AI 機能を組み込む

「載せる」は、開発作業への AI 活用から、利用者が使う機能の企画へ対象を広げる領域です。たとえば、情報検索、文章の下書き、業務上の問い合わせへの回答などを、製品機能の候補として検討できます。

企画では、利用者が何を完了したいのか、どの情報を使うのか、AI の出力をどの基準で評価するのかを決めます。試作後は、想定する入力と期待する出力を使って試作した AI 機能を評価し、利用料や運用方法も確認する手順です。

開発会社の提案にも、既存機能の実装に加えて、AI を使った機能の企画と継続評価を含められます。開発に AI を使う能力と、顧客が使う AI 機能を設計する能力を、担当範囲として分けて育てることが大切です。

研修で手順をそろえ、経営者が提案と成果の測り方を決める

FIXIT は AI 駆動開発のクリエイティブスタジオとして、テストを先に書き、AI に実装させ、人がレビューする手順を重視しています。AI 駆動開発研修 では、受講企業の実リポジトリを教材に、設定一式とレビュー基準を残します。

標準プランは手順とレビュー基準の整備、実践プランは実案件への適用、定着プランは運用ルールと効果測定の設計までを扱う構成です。本記事の 9 領域を自社の仕事と照らし、まず何をチームで実行できる状態にしたいかを整理してください。

研修後の継続的な運用は、AI 開発ツール定着支援 でも相談できます。経営者と開発責任者が、成果を測る期間と対象案件、値決めを見直す担当者を決めておけば、手順の改善を顧客への提案まで反映しやすくなります。

自社の開発手順を見直す際は、AI 駆動開発研修についてご相談ください。世に出した数、1 人が同時に持てる本数、着手から本番までの日数を、チームで確認できる状態から始めましょう。