Claude を Team や Enterprise のプランで契約している情報システム部門・DX 推進担当者ほど、周辺ツールの選定がバラバラになりがちです。現場ごとにコネクタを個別契約し、誰が何を使っているのか情シスが把握できていない。そんな状態に心当たりがあるなら、2026 年 9 月 23 日の発表は見ておく価値があります。

Anthropic がこの日公開した Claude Marketplace は、コネクタ・プラグイン、Claude 搭載製品、コンサル・SI パートナーという 3 つの調達チャネルを 1 か所にまとめた企業向けプラットフォームです。似た名前の機能として、Claude Code の開発者が以前から使っている「プラグインマーケットプレイス」もありますが、これは別物です。この記事では両者を区別したうえで、3 カテゴリの中身、コミット済み利用額を充てる仕組み、自社で作るか買うかの判断軸、Claude Partner Network の構造、セキュリティ・ガバナンスで確認すべき点を、公式ブログと各カテゴリページで確認できる範囲に絞って整理します。

Claude Marketplace とは何か — 2026 年 9 月 23 日に何が統合されたか

公式ブログの冒頭は次のように説明しています。原文は "Starting today, the Claude Marketplace brings plugins and connectors, agents and products, and service partners into one place. For customers, it provides a single destination to find the right tools and services. For builders and partners, it offers an easier way to reach teams using Claude." です。

日本語にすると、顧客にとってはツールとサービスをここから探せる単一の窓口になり、開発者・パートナーにとっては Claude を使うチームへ届きやすくなる場、という位置づけです。ページ末尾の Getting started セクションも "Claude Marketplace is live today." と明記しており、9 月 23 日から一般提供が始まっていることが確認できます。日本語版のブログでも同じ内容が読めますが、日本企業固有のパートナーや日本市場向けの追加情報は確認できませんでした。

まず押さえておきたいのは、この発表が単一の新機能ではなく「窓口の統合」だという点です。3 つのカテゴリはそれぞれ別のページとして以前から存在し得るものでしたが、Marketplace という 1 つの入り口からまとめて探せるようになりました。

flowchart LR
  M["Claude Marketplace"] --> A["Add<br/>コネクタ・プラグイン"]
  M --> B["Buy<br/>Claude 搭載製品"]
  M --> C["Scale<br/>コンサル・SI パートナー"]
  A -->|MCP・Agent Skills| A2["業務ツールを会話に接続"]
  B -->|コミット済み利用額を充当| B2["サードパーティ製品を購入"]
  C -->|Claude Partner Network| C2["全社導入を伴走で進める"]

3 つのカテゴリを整理する

上位表示される日本語記事の多くは、このうち 1 カテゴリだけを扱っています。ここでは 3 つを横に並べて整理します。

コネクタ・プラグイン (Add) — MCP と Agent Skills で作られている

公式ブログは "Choose from more than 2,000 available today, including Atlassian, Google, Microsoft, Notion, Salesforce, and more." と説明しています。日常業務で使っているツールを Claude の会話に接続するカテゴリで、代表的な接続先として Google Drive・Gmail・Google Calendar・Canva・Microsoft 365・Notion・Figma・Slack・Atlassian・HubSpot・Asana・Linear・Adobe・Spotify・Vercel などが確認できます。カテゴリは Commerce & shopping・Communication・Creative・Data & analytics・Developer tools・Financial services・Healthcare・Legal・Media & entertainment・Productivity・Sales & marketing など 18 種類程度に分かれています。

注意

件数の表記には食い違いがあります。公式ブログ本文は「2,000 件以上」ですが、コネクタ・プラグイン一覧ページの表示は「840 connectors」と「340 plugins」でした (2026 年 9 月 25 日取得時点)。合計しても 2,000 件には届かず、集計の範囲や更新タイミングが違う可能性がありますが、対応関係は Anthropic の公式情報に説明がありません。断定せず、両方の数字がある前提で読んでください。

技術的な作りにも触れておきます。申請ページの文言によると、コネクタ・プラグインは Model Context Protocol (MCP) と Agent Skills という 2 つの技術で作られています。前者は外部ツールとの接続規格、後者は作業手順そのものを Claude に持たせる仕組みです。Agent Skills を社内でどう設計し、属人化させずに共有するかは Agent Skills の仕組みと共有設計にまとめています。

Claude 搭載製品 (Buy) — コミット済み利用額で導入する

2 つ目のカテゴリは、Claude を組み込んだサードパーティ製品を購入する窓口です。公式ブログは "Use a portion of your committed Anthropic spend on Claude-powered software from companies like CrowdStrike, Cursor, Harvey, Legora, Lovable, and Snowflake." と説明しています。

掲載製品一覧ページ (2026 年 9 月 25 日取得時点) で確認できた 15 件は次のとおりです。

会社名分野の目安
Augment開発
Base44開発
CodeRabbit開発 (コードレビュー)
CrowdStrike Charlotte AIセキュリティ
Cursor開発
Factory開発
Gamma資料作成
GitLab開発
Harvey法務
Hebbiaデータ分析
Legora法務
Lovable開発
Rogo金融
Snowflakeデータ分析
Vercel開発

ページ上のフィルターは Code・Data・Financial Services・Legal・Security の 5 分野で、上表の「分野の目安」はこのフィルター構成を参考にした概略です。各製品の価格や契約条件は公開されておらず、ボタンは「Request to buy」「Try Claude」「Contact sales」のいずれかに案内されます。個別製品の機能や導入効果を語れるだけの一次情報は無いため、この記事では企業名とカテゴリの紹介にとどめます。

購入のメリットとしてページが挙げているのは 3 点です。AI 支出を一元化できること (Consolidated AI spend)、エンタープライズ対応済みのパートナーであること (Enterprise-ready partners)、拡張性を備えていること (Built to scale with you) です。特に 1 点目は、後述する「コミット済み利用額の充当」と対応する仕組みだと読めます。

コンサル・SI パートナー (Scale) — Claude Partner Network の 3 階層

3 つ目は、Claude の全社導入を伴走してくれるコンサルティング会社・システムインテグレーターの一覧です。ページのリード文は "Bring in certified experts to roll Claude out across your entire organization." です。

パートナーは 3 階層に分かれています。

階層代表企業の例
Global PremierAccenture、Bain & Company、Boston Consulting Group、Capgemini、Cognizant、Deloitte
PreferredBounteous、Caylent、EPAM Systems、Forgd、Fractal、Globant など
Select10Clouds Financial Institutions、A.Team、adesso SE など

Claude Partner Network 自体は、2026 年 3 月 12 日の発表で初年度 1 億ドルの投資コミットとともに紹介されています。同発表では Accenture が 3 万人のプロフェッショナルへ研修を進めていること、Cognizant が約 35 万人のアソシエートへアクセスを広げていることなどが、各社の担当者の発言として紹介されました。Boston Consulting Group への言及はこの 3 月の発表ページでは確認できませんでしたが、Global Premier 階層の一員として Service partners ページ (2026 年 9 月 25 日取得時点) に掲載されています。

FIXITFIXIT

Marketplace で買うのと、コンサルに頼むのって、何が違うの?

TsukasaTsukasa

結論から言うと、買うのは製品そのもの、頼むのは導入の設計と実行です。

FIXITFIXIT

じゃあ両方使ってもいいってこと?

TsukasaTsukasa

判断の軸は、自社に導入を設計できる人がいるかどうかです。いなければ Scale カテゴリで補う選択肢になります。

「コミット済み Anthropic 利用額を充当できる」とは

Buy カテゴリの核心はここです。Anthropic と、一定期間で一定額を使うコミット済み利用額の契約を結んでいる企業は、Claude Marketplace の Buy カテゴリで、その契約枠の一部を Claude 搭載製品の購入に充てられます。公式ブログの Getting started セクションは "Claude Marketplace is live today. Explore the tools, agents, and services that can help your teams do more with Claude." と、まず探すことを促す書き方をしています。

実務上の意味は 2 つあります。1 つは、対象がすでにコミット済み利用額の契約を結んでいる企業向けだという点です。契約枠が無ければ充てる原資もありません。もう 1 つは、購入のメリットとして挙げられている「Consolidated AI spend (AI 支出の一元化)」です。Anthropic への支払いの枠内でサードパーティ製品の代金も扱えるなら、新規ベンダーごとに個別の与信・契約手続きを起こす手間を減らせる可能性があります。ただし、この一元化がどこまでの範囲 (請求書の発行主体、契約の当事者など) に及ぶのかまでは、公式情報で明記されていません。稟議を通す段階では、自社の経理・法務と個別に確認してください。

コミット済み利用額の契約自体がどんな条件で結ばれるかは、Claude Code を法人で導入するときの Team/Enterprise プランの選び方で扱っています。Marketplace での使い道を検討する前提として、まず自社がどのプランでどれだけコミットしているかを確認しておくと、判断が早くなります。

自社で MCP サーバーを作るか、Marketplace で買うか

エンジニアがこのニュースを見て最初に気になるのは、自作すべきか既製品を使うべきかという判断です。Marketplace には多数のコネクタ・プラグインが並んでいます (件数の表記は前述のとおり公式情報の間で食い違っています)。自作する前に探す価値はありますが、既製品には既製品の制約もあります。

観点自作する (MCP サーバーを自作)Marketplace で導入する
着手までの速さ設計・実装・テストの工数がかかる掲載されていればすぐ試せる
カスタマイズ性自社の業務フローに合わせて自由に作れる提供元の仕様に合わせる必要がある
保守の負担自社が継続してメンテナンスする提供元がアップデートを担う
データ範囲の把握自社でアクセス範囲を細部まで把握できる提供元のデータ取り扱い方針に依存する
費用の性質エンジニアの工数として発生するコミット済み利用額の枠を消費する

自社の業務に強く固有の連携 (社内基幹システム、独自フォーマットのデータなど) は自作が向きます。反対に、Notion や Slack、Google Workspace のような一般的な SaaS との接続は、すでに掲載されているコネクタを試すほうが早いはずです。自作の実装手順は MCP サーバーの自作ガイドにまとめています。

FIXITFIXIT

作ってから Marketplace に同じようなコネクタがあった、ってなったらもったいなくない?

HayateHayate

使い分けの目安は、まず掲載一覧を検索してからです。無ければ自作、あれば試してから決めます。

FIXITFIXIT

試して微妙だったら?

HayateHayate

そこで初めて自作を検討します。順番を飛ばすと工数だけ先に失います。

Claude Code の「プラグインマーケットプレイス」とは別物 — 用語の整理

「Claude Marketplace」という名前を見て、Claude Code をすでに使っている人ほど混乱しやすいポイントがあります。Claude Code には、CLI から /plugin marketplace add のようなコマンドでマーケットプレイスを登録し、そこからコマンドやサブエージェントを追加できる、以前からの機能があります。これは開発者が自分のリポジトリを誰でも公開できる仕組みで、購入という概念はありません。

今回の Claude Marketplace は、これとは別に 2026 年 9 月 23 日に立ち上がった企業向けの調達プラットフォームです。両者の違いを整理すると次のようになります。

観点Claude Code のプラグインマーケットプレイス (従来から)Claude Marketplace (2026-09-23)
対象読者Claude Code を使う開発者企業の調達・情シス・DX 推進担当者
提供元誰でも自分のリポジトリを公開できるAnthropic に申請して掲載される
中身コマンド・サブエージェントなどコネクタ・プラグイン、Claude 搭載製品、コンサル・SI パートナー
費用基本的に無料Buy カテゴリはコミット済み利用額を充当

Add (コネクタ・プラグイン) と Scale (コンサル・SI パートナー) の費用体系は、公式情報に明記がありません。Add は閲覧・接続そのものに追加課金があるという記載は無く、Scale はパートナーごとの個別契約になると考えられますが、いずれも断定できる一次情報は確認できませんでした。

自社でこの発表を説明するときは、「Claude Code のプラグイン機能の話ではなく、Anthropic が運営する企業向けの調達窓口の話です」と前置きするだけで、社内の混乱をかなり防げます。

セキュリティ・ガバナンスで確認すべきこと

Marketplace 経由でサードパーティのコネクタや製品を使うとなると、情シスが気にするのはデータの扱いです。確認できる範囲は限られていますが、整理しておきます。

まず、Buy カテゴリの購入メリットとして「Consolidated AI spend (AI 支出の一元化)」が挙げられている点から、請求は Anthropic 経由でまとめられると読めます。一方で、購入した各製品が実際にどのデータへアクセスし、どこに保存するかという契約主体は、Anthropic ではなく各パートナー企業になると考えるのが自然です。ただし、この切り分けを明記した一次情報は 2026 年 9 月 25 日時点で確認できていません。推測で「安全です」と説明せず、導入前に各社の利用規約・データ処理契約を個別に確認する運用をお勧めします。

コネクタ・プラグインについても同様です。公式情報は申請して掲載される流れを説明しているだけで、Anthropic がどのような基準で掲載を判断しているかは公開されていません。社内で許可するコネクタの範囲は、既存のガバナンス設計の中で判断します。全社導入時のガバナンス設計は Claude Code 全社導入の完全ガイドに、5 段階のロードマップと合わせて整理しています。

補足

確認の優先順位は、まず自社の既存ガバナンス基準 (どのベンダーへのデータ持ち出しを許可するか) に照らして Marketplace 掲載製品を評価すること。掲載されていること自体を「安全」の根拠にしないことです。

自社が掲載される側になるには

Marketplace は使う側だけでなく、掲載される側になる道も用意されています。公式ブログでは、3 つの申請パスが紹介されています。

  1. コネクタ・プラグインは、Model Context Protocol (MCP) と Agent Skills を使って作成し、コネクタの申請ページまたはプラグインの申請ページから申請します。
  2. Claude 搭載製品は、自社製品をマーケットプレイスパートナーの申請フォームから申請します。掲載されれば、顧客はコミット済み利用額の一部を使って購入できるようになります。
  3. コンサル・SI パートナーは、Claude Partner Network の申請フォームから参加を申し込みます。

自社製品を SaaS として展開しているなら 2 番目、業務改善のコンサルティングやシステム開発を提供しているなら 3 番目が候補になります。申請から掲載までの基準や所要期間は公開されていないため、詳細は各申請ページで直接確認してください。

FIXIT の運用 — 採用するか自作するかを、ガバナンス込みで決める

私たちは AI 駆動開発のクリエイティブスタジオとして、複数の AI ベンダーの周辺ツールを実プロジェクトで使い分けています。新しい調達チャネルが 1 つ増えるたびに意識しているのは、「便利そうだから試す」の前に、既存のガバナンス設計へ組み込めるかを先に確認することです。コネクタを 1 つ許可するだけでも、データがどこへ渡るかの整理が要ります。

Marketplace のような統合窓口が増えるほど、選択肢は広がりますが、選ぶ手間も増えます。自作するか買うかの判断基準を先に決めておき、Marketplace はその基準に照らして評価する道具として使う、という順番を崩さないことが、乱立を防ぐ一番の近道だと考えています。

今日から確認できること

ニュースを見て焦って全部を導入する前に、自社に関係する部分だけを見極める順番で進めるのが安全です。

  1. 自社が Anthropic とコミット済み利用額の契約を結んでいるかを、契約担当者に確認します。
  2. コネクタ・プラグイン一覧を眺めて、現場でよく使うツールが掲載されているかを見ます。
  3. 自作を検討していた連携があれば、Marketplace に代替できるものが無いかを先に探してから着手するかどうかを決めます。

複数の AI ベンダーのツールをどう組み合わせ、Marketplace での調達と自社での内製をどう線引きするか、その判断とガバナンス設計を一緒に進めたい場合は、AI 開発ツール定着支援をご覧ください。自社のリポジトリ構成や契約状況に合わせた進め方は、お問い合わせから個別にご相談いただけます。