EC サイト構築の見積は「方式選び」で桁が変わる

「自社の EC サイトを立ち上げたいが、Shopify で始めるべきか、フルスクラッチで作るべきか判断できない」——EC 構築の発注を検討する担当者の多くが、まずこの分岐点で悩みます。EC サイトは同じ「ネットショップ」に見えても、選ぶ構築方式によって初期費用が 10 万円台から数千万円まで 100 倍以上開くことがあります。金額の差を生むのは機能そのものではなく、方式の設計思想と拡張の自由度です。

この記事では、ASP (クラウド型)・オープンソース (OSS / パッケージ)・フルスクラッチという 3 方式の費用レンジと内訳を整理し、決済・物流・WMS 連携や、リリース後のランニング費用、相場が上振れやすい要因までを解説します。システム開発全般の見積構造については システム開発の見積相場 もあわせてご覧ください。

FIXITFIXIT

Shopify なら安いって聞くのに、なんで 200 万とかの見積が来るの?

HinataHinata

その気持ち、わかります。Shopify 本体は安いんですが、テーマ改修・アプリ設定・決済 / 物流の初期設定を積むと数百万円になるんですよ。

FIXITFIXIT
じゃあ、いちばん高いのがフルスクラッチ?
HinataHinata

自由度は最大ですけど、初期版で 1,500〜4,000 万円が中央値です。作り込みも保守責任も全部乗るので、覚悟が要りますよ。

FIXITFIXIT

うちみたいに BtoB で価格ルールが複雑なやつは、どう選べばいい?

HinataHinata

大丈夫ですよ。独自要件の多さと外部連携の本数を先に洗い出せば、方式は自然と絞れます。

1. EC サイト構築の 3 方式と費用レンジ

EC サイトの構築方式は、大きく次の 3 つに分かれます。方式によって初期費用・ランニング費用・カスタマイズの自由度・リードタイムがまったく異なります。

方式初期費用の目安月額ランニングリードタイム向いているフェーズ
ASP (Shopify 等クラウド型)10〜300 万円数千円〜10 万円台1〜3 か月立ち上げ〜年商数億円
オープンソース (EC-CUBE 等)200〜1,000 万円サーバ実費 + 保守3〜6 か月独自要件の中規模 EC
フルスクラッチ1,500〜5,000 万円数十万円〜6〜18 か月大規模・複雑な要件

ASP 型

Shopify、BASE、STORES、makeshop、futureshop など、クラウドベンダーが提供する EC 基盤を月額利用する方式です。テンプレートとアプリを組み合わせて構築するため、要件がテンプレートに収まる範囲なら最短で立ち上げられます。年商数億円クラスまでは ASP で運用する事業者が多数派です。

オープンソース型

EC-CUBE や Magento などの OSS、あるいは ecbeing・コマース 21 などの国産パッケージを土台にカスタマイズする方式です。ソースコードに手を入れられるため、ASP では吸収しきれない独自要件 (複雑な会員種別、独自の値引き、基幹連携など) を持ち込める一方、保守・アップデート責任も発注側に残ります。

フルスクラッチ型

土台となる製品を使わず、要件に合わせてゼロから設計・実装する方式です。自由度は最も高く、初期費用も最も高くつきます。大手 BtoC・BtoB のオリジナル業態、既存製品では吸収できない業務フロー、独自の UX 体験を重視するブランドで採用されます。

方式選定の前段として、要件をどこまで固められているかで見積精度が大きく変わります。発注前の準備は 発注前に整理すべきこと を参考にしてください。

2. 主要 ASP の費用構造

ASP 型は「月額固定 + トランザクション課金 + 拡張アプリ」の 3 層で費用が積み上がる構造です。「月額数千円で始められる」という広告表現に対して、実運用に必要なアプリを積むと想定の 2〜3 倍になるケースが少なくありません。

月額プラン

  • Shopify は Basic〜Plus で月額 4,000 円〜3,000 ドル超と幅が広く、海外展開・多通貨・大規模は Plus 帯です。
  • BASE / STORES は月額 0 円〜数千円で開始でき、その代わり手数料率が高めに設定されています。
  • makeshop / futureshop は月額 1〜5 万円クラスで、中規模 EC 向けの標準機能が同梱されています。
  • Shopify Plus / MakeShop エンタープライズは月額 30 万円〜で、大規模 EC や卸機能を含みます。

トランザクション課金 (決済手数料)

売上に対して 3〜4% 程度の決済手数料が乗ります。加えて、Shopify Payments 以外の決済を使う場合は Shopify の追加手数料が発生します。年商 1 億円のショップなら年間 300〜400 万円が決済関連費として計上される計算です。

拡張アプリ・テーマ

「レビュー」「サブスク」「複雑な送料」「B2B 価格」「多言語」「在庫連携」など、標準機能で足りない要件はアプリで補います。1 アプリあたり月額 20〜200 ドルが相場で、5〜10 本積むと月額数万円が上乗せされます。カスタムテーマの制作は 50〜300 万円が中心帯です。

ASP 初期構築の見積内訳

ASP でも「テーマ選定と設定のみ」なら 10 万円台、Shopify の本格構築 (カスタムテーマ・アプリ選定・データ移行・決済 / 物流設定・簡易連携) だと 100〜300 万円が一般的です。既存 EC からの移行案件では、商品・顧客・注文データの移行工程だけで数十万円〜計上されます。

3. フルスクラッチ EC の見積内訳

フルスクラッチで組む場合、見積は次の機能モジュールごとに工数が積み上がります。全部を初期リリースに詰め込むと大規模化しやすいため、優先度で切り分ける発想が必要です。

モジュール概要工数の目安
フロント (商品・カテゴリ・検索)商品一覧・詳細・検索・レコメンド3〜8 人月
カート・注文フローカート・購入導線・ゲスト購入2〜4 人月
決済連携クレカ・コンビニ・キャリア・後払い2〜5 人月
在庫・受注管理在庫引当・受注ステータス・キャンセル3〜6 人月
会員・マイページ会員登録・注文履歴・ポイント2〜4 人月
管理画面商品・顧客・受注・クーポン管理4〜10 人月
基盤 (認証・権限・監査ログ)全体で共通利用する土台2〜4 人月

これに加えて、要件定義・設計・テスト・リリース作業がそれぞれ全体の 15〜25% ずつ乗ります。合計すると、標準的な BtoC EC のフルスクラッチ初期版で 20〜40 人月、金額換算で 1,500〜4,000 万円が中央値です。

初期リリースを絞り込みたい場合は、MVP 開発の見積 の考え方でスコープを分割する選択肢もあります。

4. 決済・物流・WMS 連携の見積影響

EC の見積は、単体機能よりも「外部システムとの接続数」で膨らみます。連携 1 本あたり数十万〜数百万円が上乗せされるのが標準的な感覚です。

決済代行との連携

GMO ペイメントゲートウェイ、SB ペイメント、Stripe などの決済代行を使うのが一般的です。1 決済代行あたり 50〜150 万円が目安で、複数決済手段 (クレカ・コンビニ・キャリア決済・後払い・PayPay など) を積むほど工数が増えます。ASP でも、追加決済手段の設定・審査対応工程は発生します。

物流 (配送業者) との連携

ヤマト・佐川・日本郵便の API 連携、送り状発行、追跡番号取り込みで 50〜200 万円が目安です。冷蔵 / 冷凍・チルド・宅配ボックス指定などの特殊要件が入ると加算されます。

WMS・OMS・基幹システム連携

自社倉庫の WMS や、OMS (オーダーマネジメントシステム)、基幹の在庫・会計との連携は、100〜500 万円の追加見積が発生することが珍しくありません。連携方式 (CSV / API / EDI)、リアルタイム性、双方向同期の有無で工数が大きく変わります。

こうした連携は非機能要件 (性能・可用性・エラー時のリカバリ) と密接に絡み、見積のブレ幅が大きい領域です。詳しくは 非機能要件が見積に与える影響 をご覧ください。

5. リリース後のランニング費用

EC サイトは「作って終わり」ではなく、リリース後の運用・改善が売上に直結します。年間で初期費用の 20〜40% 相当のランニング費用を見込むのが安全です。

  • サーバ・インフラ費は、ASP は月額に内包され、フルスクラッチでは AWS / GCP で月額数万〜数十万円が目安です。
  • 保守契約は月額 20〜100 万円が中心で、障害対応・軽微改修・ライブラリ更新が含まれる範囲です。
  • SEO・広告基盤は、計測タグ管理・広告連携・レコメンド・CDP 連携などで年間数百万円規模になります。
  • 改善開発は CVR 改善・A / B テスト・機能追加で、年間で工数を確保するかどうかで成長速度が変わります。

保守・運用の詳細な考え方は 保守・運用の見積 を参照してください。

6. 相場が上振れる典型要因

同じ「EC サイト」でも、次の要素が入ると見積は数割〜倍単位で跳ね上がります。方式選定の前にどれが自社に該当するかを整理しておくと、無駄な相見積を避けられます。

  • 多店舗運営 (ブランド別・地域別のマルチストア)
  • 多通貨・多言語・国際配送 (税率・関税・翻訳運用)
  • BtoB 取引 (見積書発行・掛売・与信管理・取引先別価格)
  • 卸価格・会員ランク別価格・数量割引の組み合わせ
  • ポイント / クーポン / サブスク / 定期購入の複合設計
  • リアル店舗との在庫共有 (OMO・店舗受取・実店舗在庫連携)
  • 独自の物流フロー (同梱ルール・冷凍便・薬機法対応など)

これらは 1 つ入るごとに数百万円単位で加算されるため、初期リリースに詰め込むより、フェーズを切って段階リリースにするほうが総額を抑えられるケースが多くあります。

コツ

EC の見積は「月額の安さ」だけを見ると実運用ベースでズレます。方式を決める前に、想定 GMV・在庫連携先・BtoB の有無・会員ランク設計を洗い出し、それらを ASP の標準・アプリ・独自実装のどこに載せるかを 1 枚に整理すると、方式選定の会話が一気に噛み合います。

まとめ

EC サイトの構築費用は方式で 10 万円台から数千万円まで大きく振れます。ASP は月額プラン・トランザクション・アプリの 3 層構造、オープンソースは自由度と保守責任のトレードオフ、フルスクラッチはモジュール別工数の積み上げ——という骨格を押さえたうえで、決済・物流・WMS 連携の本数と、多店舗・BtoB・多通貨などの上振れ要因を織り込むと、社内で複数社の EC 見積を並べて評価する足場ができます。

AI 駆動開発のクリエイティブスタジオである FIXIT では、EC 事業者の現在の売上規模・成長計画・業務要件から、方式選定と段階リリースの設計を含めた見積を提示しています。「ASP で足りるのか、フルスクラッチが必要なのか」を相談したい方は 無料相談 からお気軽にご連絡ください。進め方の全体像は AI 駆動開発サービス もあわせてご覧ください。