Kimi K3.1 Pro が公開された — まず知りたいのは K3 との関係

Moonshot AI が 2026 年 10 月下旬、K3.1 シリーズの第 1 弾として Kimi K3.1 Pro を公開しました。公式は 3T 級のオープンウェイトモデルで、コンテキストは 100 万トークンと説明しています。Kimi K3 は Kimi K3 とは で扱ったとおり、2026 年 7 月に公開された 2.8 兆パラメータの MoE モデルです。

K3 の記事を読んだ人が最初に知りたいのは、「K3.1 Pro は別のモデルなのか、K3 の延長なのか」でしょう。公式ブログの答えは後者で、K3 に後処理 (post-training) を足したモデルだとしています。そこで本記事は、公式ブログ、API ドキュメント、API の料金ページ、Kimi Code のドキュメントの 4 ページを突き合わせ、書かれていることだけを整理します。

2026 年 10 月 25 日の時点で、公式の資料に書かれていない項目もあります。ライセンスと正確なパラメータ数です。これらは推測で埋めず、「書かれていない」と明記します。

ひと目でわかる Kimi K3.1 Pro の基本仕様

公式の 4 ページから確認できた内容を、先に表で並べます。

観点Kimi K3.1 Pro
位置づけKimi K3 の後処理を強めたモデル (K3.1 シリーズの第 1 弾)
規模3T 級
コンテキスト100 万トークン
入力画像と動画に対応
思考常にオン。オフにできない
API のモデル IDkimi-k3.1-pro / kimi-k3.1-pro-highspeed
Kimi Code のモデル IDk3.1-pro / k3.1-pro-highspeed
提供経路Kimi.ai (Web・モバイルアプリ)・Kimi Work・Kimi Code・Kimi API
API の料金 (100 万トークン)入力 2 ドル・出力 10 ドル
重み11 月 4 日までに完全な重みを公開する予定
ライセンス・正確なパラメータ数未公表

入力の対応は Kimi Code のドキュメントの表に、料金は API の料金ページに、重みの期限は公式ブログにあります。ライセンスと正確なパラメータ数は、確認した 4 ページのどこにも書かれていません。

公式ブログのベンチマークの節は図だけで、説明の本文がありません。この点は後のベンチマークの節で触れます。

K3 から何が変わったか — 公式が書いていること

公式ブログと API ドキュメントは、どちらも、K3.1 Pro は K3 に後処理を加えたモデルで、後処理に使った計算量が K3 よりずっと多いと説明しています。基盤が別のモデルになったとは書かれていません。K3 の 100 万トークンというコンテキストも、K3.1 Pro に引き継がれています。

公式が変化として挙げているのは、おおむね次のとおりです。

  • 長い作業を想定した社内評価 (Kimi Code Bench 3.0 Long-horizon) で、K3 の 55.95% から 61.2% に上がった
  • 社内の負荷試験 Kimi Hallu Bench Hard のツールありの条件で、主張単位の幻覚率が K3 の 23.4% から 8.3% に下がった
  • コーディング、3D モデリング・設計、金融、サイバーセキュリティの 4 領域を、公式ブログの見出しとして挙げている

一方で、「K3 のこの機能がなくなった」といった記述は、確認した 4 ページには見当たりませんでした。K3 から変わった挙動の一覧や移行の手順は、公式に載っていません。K3 の API を使っているコードを K3.1 Pro に差し替えるときは、次の節の制約を先に読んでください。

FIXITFIXIT

えっ、K3.1 って K3 と別のモデルなの?

TsumikiTsumiki

別のモデルではないです。K3 に後処理を足した版なので、土台は K3 のままです。

FIXITFIXIT

じゃあ、K3 を使ってる人は何を見ればいいの?

TsumikiTsumiki

モデル ID と、思考が常にオンになる点です。まず実際に呼んで、既存のコードが通るかを見るのが早いです。

使い始め方 — Kimi.ai・Kimi Work・Kimi Code・API

公式ブログによると、提供経路は Kimi.ai (モバイルアプリを含む)・Kimi Work・Kimi Code・Kimi API の 4 つです。経路によってモデル ID の書き方が違うので、表にまとめます。

経路選び方
Kimi.ai・Kimi アプリkimi.ai を開くか、アプリを最新版に更新する (iOS・Android・HarmonyOS)
Kimi Work (デスクトップ)3.1.0 以降に更新する (Windows・Apple シリコンの Mac)
Kimi Code (CLI)/model で Kimi K3.1 Pro を選ぶ
Kimi Code (他社の道具)モデル ID に k3.1-pro または k3.1-pro-highspeed を指定する
APIモデル ID に kimi-k3.1-pro または kimi-k3.1-pro-highspeed を指定する

API の公式ドキュメントの基本の呼び出しは、OpenAI 互換の SDK で書かれています。ベース URL は https://api.moonshot.ai/v1 で、キーは環境変数の MOONSHOT_API_KEY に置く例です。

import os
 
from openai import OpenAI
 
client = OpenAI(
    api_key=os.environ["MOONSHOT_API_KEY"],
    base_url="https://api.moonshot.ai/v1",
)
 
resp = client.chat.completions.create(
    model="kimi-k3.1-pro",
    messages=[
        {"role": "user", "content": "この関数の単体テストを書いてください。"},
    ],
)
print(resp.choices[0].message.content)

API は、1 ドル以上のチャージで使えるようになります。累計のチャージ額でアカウントの階層とレート制限が決まる、と書かれています。

Kimi Code には、プランの条件があります。ドキュメントの内容は次のとおりです。

プラン体系通常版が使える100 万トークンが使えるHighspeed が使える
新プランPlus 以上Pro 以上Pro 以上
旧プランModerato 以上Allegretto 以上Allegretto 以上

プランがモデルや 100 万トークンに足りないときは、HTTP 403 が返ります。

使い始めで気をつける点が、2 つあります。

1 つ目は、モデル ID の打ち間違いです。Kimi Code のドキュメントによると、他社の道具で ID を打ち間違えると、思考なしの K2.8 Preview に切り替わります。エラーにならず別のモデルが答えるため、出力の質が急に変わったときは ID を疑ってください。

2 つ目は、既存のセッションでの切り替えです。K3、K2.8 Preview、K2.7 Code Highspeed のセッションの途中でこのモデルに切り替えると、出力の質とキャッシュのヒットが下がる、とドキュメントにあります。新しいセッションで始めるよう勧められています。

Highspeed の違いと選び方

kimi-k3.1-pro-highspeed は、通常版と同じ能力で出力を速くしたモデルです。公式ブログは「通常版の 2〜3 倍の速さ」と書き、Kimi Code のドキュメントは、クォータの消費が約 2 倍になると書いています。

Kimi Code のドキュメントによると、速くなるのはモデルの出力だけです。ファイルの読み書きやコマンドの実行といったツールの呼び出しと、スクリプトの実行は速くなりません。ツールの実行が 1 ターンの大半を占める作業では、速さの差は小さく感じられる、とドキュメントは説明しています。

選ぶ目安は、人が画面の前で待つかどうかです。対話的に進めるときは待ち時間が短くなる Highspeed が向き、放っておいて結果を後で見る作業なら通常版で足ります。API で使う場合、Highspeed は単価も通常版の 2 倍です。

API の料金 — 100 万トークンあたりの単価

API の料金ページには、K3.1 Pro の単価が載っています。単位は 100 万トークンあたりの米ドルです。

モデル入力 (USD)出力 (USD)キャッシュ済み入力 (USD)キャッシュ書き込み 5 分 (USD)キャッシュ書き込み 1 時間 (USD)
kimi-k3.1-pro2.0010.000.202.004.00
kimi-k3.1-pro-highspeed4.0020.000.204.008.00
kimi-k33.0015.000.303.006.00

上表は料金ページの表示額です。公式は表示額に税を含まないと書いています。税は利用者の地域の規定に沿って、支払いの時点で計算されるとしています。日本の消費税の扱いは、契約時に確認してください。

コンテキストのキャッシュは、同じ前置きを繰り返す要求に自動で適用され、保持期間の既定は 5 分です。API ドキュメントの FAQ によると、料金はコンテキストの長さで段階が変わらない一律の設定です。

同じ料金ページには、K2 系のモデルの提供終了の予定も載っています。2026 年 10 月 31 日から新しく登録した利用者は K2 系を使えなくなり (既存の利用者は対象外)、12 月末までに K2 系はすべて提供を終える予定です。

思考は切れない — API で気をつける制約

K3.1 Pro は思考モードしかありません。API ドキュメントは、思考が常にオンでオフにできないと書いています。Kimi Code のドキュメントでも、思考を無効にした要求は HTTP 400 で拒否されます。

調整できるのは reasoning_effort で、low・high・max の 3 段階です。既定は API が max、Kimi Code が high です。応答を受けるときは、思考の内容 (reasoning_content) と本文 (content) が別々に返ります。

Kimi Code では、セッションの途中で思考の強さやモデルを変えると、既存のコンテキストのキャッシュが無効になります。読み込み直しが起きてトークンの消費が増えるため、同じセッションでは同じ設定を保ち、変えるなら新しいセッションで始めるよう勧められています。

API ドキュメントの「Important limits」から、既存のコードに影響しやすい点を拾います。

  • temperature は 1.0、top_p は 0.95 などの値が固定で、リクエストに含めない
  • 多ターンの会話やツール呼び出しでは、content だけでなく、assistant のメッセージ全体を返す
  • 画像は公開 URL を受け付けず、base64 か ms://<file-id> で渡す
  • Web 検索は更新中で、本番での利用は勧められていない
  • 出力の上限 (max_completion_tokens) の既定は 131072 で、最大 1048576 まで指定できる

OpenAI 互換の呼び出しを他のモデルから差し替えるときは、固定されたパラメータを送っていないかと、assistant メッセージを丸ごと返しているかを見てください。

FIXITFIXIT

思考を切って、安く速く使いたいときはどうするの?

TsumikiTsumiki

切れません。まず reasoning_effort を low にして、品質が足りるかを試すのが先です。

ベンチマークの読み方 — 公式の自社評価として見る

公式ブログのベンチマークの節は図だけで、説明の本文がありません。下の数字は、ブログの各節の本文と図から、読み方に注意が要るものを選びました。いずれも Moonshot AI が自社で出した値です。公式の脚注によると、K3.1 Pro の結果は、特に断りがない限り reasoning_effort を max にして測っています。Kimi Code の既定は high なので、既定のまま使うときとは条件が違います。

評価K3.1 Pro比較
Terminal-Bench 4.065.7%Claude Opus 5.5 が 66.4%、GPT-6 Astra が 58.2%
Kimi Code Bench 3.0 Long-horizon (社内)61.2%K3 が 55.95%、GPT-6 Astra が 66.5%、Claude Opus 5.5 が 58.5%
Kimi Hallu Bench Hard ツールあり (幻覚率、低いほどよい)8.3%K3 が 23.4%、GPT-6 Astra が 5.5%、Claude Opus 5.5 が 15.0%
xdev-bench-hard (サイバー関連、pass@3)81.0%関連データを除かない途中の版は 90.5%

読むときの注意が 3 つあります。

1 つ目は、Terminal-Bench 4.0 では Claude Opus 5.5 のほうが上だという点です。K3.1 Pro が全項目で最上位とは、公式の数字からも言えません。また、公式の脚注によると、K3.1 Pro は Claude Code のハーネスで測った値で、他社のモデルは各社の発表と Terminal-Bench 4.0 の公式リーダーボードのうち大きいほうの値です。測り方を揃えた比較ではありません。Claude Opus 5.5 の解説 と並べて見てください。

2 つ目は、幻覚率の 8.3% が負荷試験の値だという点です。公式は、この割合が日常の使用での誤りの割合を表すものではないと注記しています。K3 の 23.4% から下がったことは読み取れますが、実務で誤りが 1 割未満になる、という意味にはなりません。比較の相手も K3 だけではありません。同じ図では、同じ条件で GPT-6 Astra が 5.5%、Claude Opus 5.5 が 15.0% です。ツールなしの条件 (Hard ではない版) では、K3.1 Pro が 5.4%、GPT-6 Astra が 4.2%、Claude Opus 5.5 が 6.8% です。

3 つ目は、サイバー関連の扱いです。公式は、学習の 2 段階でサイバー関連のデータを取り除いたと書いています。社内の評価 xdev-bench-hard の pass@3 は、データを除かない途中の版が 90.5%、最終版が 81.0% です。公式は、K3.1 Pro のサイバー関連の能力が、公開から 3 か月以上たった上位の非公開モデルにも及ばないと書いています。セキュリティ領域の作業を任せたいときは、この点を前提にしてください。

公式の脚注には、非公開モデルの試験でフォールバック (代替の挙動) が入ることがあるとの注記もあります。この一文は、社内評価 Kimi Code Bench の脚注にあるものです。比較の図では、非公開モデルの列に with fallback と添えられています。他社モデルとの差は、数字をそのまま受け取らず、自社の作業で試して決めてください。

重みの公開は 11 月 4 日まで — ライセンスは公式ブログに無い

公式ブログは、完全な重みを 2026 年 11 月 4 日までに公開すると書いています。タイムゾーンは書かれていません。「11 月 4 日に公開する」ではなく「までに」なので、期限として扱ってください。

2026 年 10 月 25 日に Hugging Face の API で Moonshot AI (moonshotai) のモデル一覧を取得したところ、Kimi K3 のリポジトリはありましたが、K3.1 のリポジトリはありませんでした。公開されたかどうかは、組織のモデル一覧で直接確認してください。

ライセンスは、公式ブログに記載がありません。Kimi K3 の重みは独自の Kimi K3 License で公開されましたが、K3.1 Pro の重みが同じ条件になるとは、確認した資料のどこにも書かれていません。K3 のライセンスの条件を当てはめて判断するのは避けてください。

公開されたら、次の順に確認すると手戻りが少なくなります。

  1. リポジトリの LICENSE を開き、名前と条件を読む (商用利用の条件、表示義務、別途契約が要る規模)
  2. モデルカードで、正確なパラメータ数と、必要な計算資源の目安を確認する
  3. 自社で動かす構成を組めるかを、規模から見積もる

K3 のときの整理は Kimi K3 とは に、オープンウェイトを自社に置く判断の軸は オープンウェイト 3 モデル比較 にあります。

業務で使う前に確認すること

重みの公開を待たなくても、API とアプリはすでに使えます。業務で使うなら、性能の比較より先に、次の 3 点を確認してください。

  • 扱うデータを外部の API に送ってよいか。自社の情報管理規程と、顧客との契約に照らす
  • 送ったデータの扱い (学習への利用、保存の場所と期間) を確認する。公式ブログには、API の利用者は Zero Data Retention (データを保持しない扱い) を使えるとある
  • 組織で使うなら、管理者の設定を確認する。Kimi Enterprise では、管理者が有効にするまで K3.1 Pro は使えない (公開時点の既定はオフ)

中国の事業者が提供するモデルを業務で使うときの情報管理の観点は、Kimi K3 とは の該当節と、AI 駆動開発のセキュリティ設計 にまとめています。Zero Data Retention を使う条件と申し込み方は、公式ブログにも、今回確認したほかの公式ページにも書かれていません。契約の前に Moonshot AI に確認してください。

FIXIT の運用 — 試す・待つ・見送るの決め方

FIXIT は AI 駆動開発のクリエイティブスタジオとして、新しいモデルが出たときは、まず公式資料で事実を確認し、自分たちの作業で試してから使う範囲を決める方針です。本記事は公式の 4 ページを読んだ整理で、実案件で検証した結果ではありません。

その前提で、読者が決めるときの目安を置きます。

状況目安
すでに Kimi Code や Moonshot の API を使っている新しいセッションで K3.1 Pro を選び、手元の作業 1 つで比べる
自社ホストが目的11 月 4 日までの重みの公開を待ち、LICENSE とモデルカードを読んでから
Claude 系を主力にしている乗り換えは急がず、用途を絞った併用を検討する
機密データを扱う情報管理の確認が済むまで、API には送らない

K3 を GitHub Copilot から使う手順は Kimi K3 が GitHub Copilot で使えるようになった にあります。

次の一歩

試す前に決めておくとよいのは、比べる作業を 1 つに絞ることです。普段 Claude Code で任せている作業のうち、結果の良し悪しが見やすいもの (たとえば既存関数の単体テストの追加) を選び、同じ指示を K3.1 Pro にも渡します。思考が常にオンなので、待ち時間とトークンの消費も合わせて記録してください。

モデルの使い分けや、情報管理の整理、チームへの定着までを一緒に組み立てたい場合は、AI 開発ツール定着支援 のページと お問い合わせ からご相談ください。

参考にした公式資料