見た目は変わらないまま、印が入る
Anthropic が、Claude の生成物に機械可読な印を埋め込む仕組み を導入しました。テキストには知覚できない透かしを織り込み、生成ファイルには C2PA 準拠の来歴メタデータを付けます。
整理すると、今回の変更は 3 つの層に分かれます。
| 対象 | 仕組み |
|---|---|
| 生成テキスト | 知覚できない透かしを本文に織り込む |
| 生成ファイル | C2PA 準拠の署名付き来歴メタデータを付ける |
| 制度上の位置づけ | EU AI Act Article 50(2) の行動規範に署名 |
公式ヘルプセンターの説明はこの一文です。
it weaves an imperceptible watermark directly into the text itself. You won't see it, and it doesn't change the meaning, quality, or readability.
読み手には見えず、意味・品質・読みやすさは変わりません。 表示が変わる類の変更ではないので、いま出力を受け取っている側の処理を直ちに変える必要はありません。
対象になる範囲
優先順位で言うと、まず確認すべきは自社の使い方が対象に入るかどうかです。
製品は Claude Platform (API)・Claude・Claude Code・Claude Cowork・Claude Tag が挙げられています。AWS・Google Cloud・Microsoft Foundry 経由の利用も、対応している範囲で含まれます。「API 経由だから対象外」ではありません。
モデル側の条件はこう書かれています。
Claude models launched on or after August 2, 2026 will support machine-readable marking at launch.
2026 年 8 月 2 日以降に公開されたモデルは、公開時点から対応します。それより前のモデルへの適用は順次進んでいる状態です。いま使っているモデルによって、入っている場合と入っていない場合があります。
補足
検知の方法についての技術ドキュメントは近日公開とされています。自社で「この文章に透かしが入っているか」を確かめる手段は、現時点では揃っていません。仕様が固まるまでは、検証を前提にした運用は組まないでください。
透かしが残る条件と、残らない条件
分かれ目は編集量です。
コピー&ペーストでは残ります。 生成された文章をそのまま別の場所に貼り付けても、印は保たれるように作られています。
一方、大きく編集すると劣化しうる とも公式に書かれています。人の手で構成から書き直した文章では、印が残らない可能性があります。
ここは二択で理解しないほうが安全です。「編集したから消えた」「していないから残っている」と言い切れる仕組みではありません。 編集量に応じて連続的に変わるものとして扱ってください。
ファイル側はもう少し脆いところがあります。C2PA のメタデータはファイルのメタデータ領域に記録されるため、メタデータを剥がす処理を挟むと失われます。 画像を変換したり、圧縮ツールを通したりする工程が入るなら、そこで落ちる前提で考えてください。
FIXITえっ、書いたものが AI 製だってバレるってこと?
Shiori整理すると、判定できるのは仕組みを持っている側だけです。誰でも読めるものではありません。
FIXIT
Shiori分かれ目は 1 つで、AI 生成でないと説明している成果物があるかどうかです。
社内のガイドラインで見直す点
制度対応そのものは Anthropic 側で完結しています。自社で必要なのは、前提が変わったことを反映する 作業だけです。
見直す価値があるのは次の 3 点です。
1 つ目は、成果物の由来の説明です。 納品物や外部公開物について「AI は使っていない」と説明している契約や規程があるなら、そこは事実と揃えてください。技術的に判定できる手段が広がるほど、説明と実態の差は表に出やすくなります。
2 つ目は、画像アセットの取り回しです。 生成した画像を変換・圧縮する工程がある場合、C2PA のメタデータは落ちます。落とすこと自体が問題になる場面は限られますが、来歴を保ったまま渡す必要がある取引先がいるなら、工程を分ける判断が要ります。
3 つ目は、社内ガイドラインの記述です。 生成 AI の利用ルールに「出力に印が付く場合がある」旨を一行足しておくと、あとから知った人が驚きません。ガイドラインの作り方そのものは 生成 AI 利用ガイドラインの作り方 に整理しています。
過剰に反応しなくてよい理由
一方で、いま慌てて何かを止める理由はありません。理由を 2 つ挙げます。
透かしの読み取りは、誰でもできるものではありません。 検知の技術ドキュメントは近日公開とされており、現時点で一般の利用者が任意の文章を判定できる状態にはなっていません。「取引先が勝手に判定して指摘してくる」段階ではないということです。
出力そのものは変わりません。 意味・品質・読みやすさに影響しないと明記されているので、既存の処理やレビューの基準を変える必要はありません。
優先順位で言うと、いま動くべきなのは「AI を使っていないと説明している成果物がある組織」だけです。 それ以外は、ガイドラインに一行足して次の改訂まで持ち越して構いません。
情報統制の全体像のなかでの位置づけ
今回の仕組みは、出て行った先で由来を追える 性質のものです。社内から外へ出す前に止める仕組みとは、役割が違います。
| 目的 | 手段 |
|---|---|
| 出す前に止める | 利用ルール・入力の制限・検査 |
| 出たあとの記録を残す | 監査ログ・セッションの取得 |
| 出た先で由来を示す | 今回の透かし・C2PA メタデータ |
3 つとも別の層です。透かしが入ったからといって、入力側の情報漏えい対策が要らなくなるわけではありません。 そちらは 生成 AI の情報漏えい対策 にまとめています。
社内の記録を残す側については、Claude Code のセッション取得が最近拡張されました。あわせて Claude の Compliance API が手元の Claude Code も取得対象に を参照してください。
まとめ
- Claude の生成テキストに、見た目を変えない知覚できない透かしが入るようになった
- 2026 年 8 月 2 日以降に公開されたモデルは公開時点から対応。旧モデルは順次対応中
- 対象は Claude Platform・Claude・Claude Code・Cowork・Claude Tag と主要クラウド経由の利用
- 生成ファイル (.svg / .png / .jpg) には C2PA 準拠の署名付き来歴メタデータが付く
- 透かしはコピー&ペーストでは残るが、大きく編集すると劣化する
- 検知の技術ドキュメントは近日公開。自社で判定する運用はまだ組めない
- 社内で動くべきなのは、AI を使っていないと説明している成果物がある場合
