プロジェクト概要

私たち FIXIT が自社で運営するハンドメイド委託販売店「カコイノマーケット イオンモール津田沼 South 店」の店舗運営を、自前のシステムでまるごと DX した自社事例です。クリエイターから作品を預かり、店舗が代わりに販売する委託販売の形態に合わせて、会計・レジアプリ、商品管理、販売情報の共有までをフルスクラッチで内製しました。初期構築は約 1〜2 ヶ月、その後も運用しながら継続的に改善しています。

設計の中心に据えたのは、市販のレジや在庫システムをそのまま入れることではありません。委託販売には「売れた 1 点がどのクリエイターのものか」を必ず特定し、精算につなげるという独自の要件があります。汎用の POS ではこの要件に届きません。だからこそ自分たちの業務に過不足なく合う仕組みを、自分たちの手でつくることを選びました。

業務上の課題

委託販売の店舗運営には、一般的な物販とは異なる固有の難しさがあります。実際に店を回しながら見えてきた課題は、次のとおりです。

  • 売れた商品がどのクリエイターのものかを、レジの場で正確にひも付ける必要がある
  • 預かっている在庫が誰の作品で、いま何点残っているのかを常に把握しなければならない
  • クリエイターごとの売上と精算を、手作業の集計に頼ると誤りや手間が膨らむ
  • クリエイターから「自分の作品は売れているか」を聞かれても、すぐに答えられない
  • 紙やスプレッドシートの管理では、店頭の状況と記録がずれていく

これらはどれも、委託販売という業態に根ざした構造的な課題です。市販のレジは「店の商品を売る」前提でできているため、「預かった作品を、持ち主ごとに分けて売る」という発想にそもそも合いません。汎用ツールの組み合わせで無理に運用すると、転記とすり合わせの手間が際限なく増えていきます。

アプローチ 1: 委託販売に最適化したフルスクラッチの会計・レジアプリ

最初に取り組んだのは、委託販売に最適化した会計・レジアプリをフルスクラッチで開発することです。市販の POS を導入するのではなく、自分たちの業務に合わせてゼロから設計しました。

このアプリの核は、会計の瞬間に、売れた 1 点を必ず持ち主へ結びつけることです。商品を登録する段階で、どのクリエイターの作品かをあらかじめひも付けておきます。レジで会計すると、その売上が自動的に該当クリエイターの実績として記録されます。店員が後から台帳に転記する必要はありません。

要点

委託販売のレジに本当に必要なのは、華やかな機能ではなく「売れた 1 点を、正しい持ち主に確実に結びつける」という一点です。フルスクラッチなら、この業務の肝だけを的確に押さえた画面と操作にできます。汎用ツールに業務を合わせるのではなく、業務にツールを合わせられることが内製の価値でした。

操作画面も、店頭で迷わないことを最優先に絞り込みました。タブレットを置くだけで使えるようにし、特別な機材は必要ありません。レジ業務に不慣れな人でも触れるよう、ボタンと導線を最小限にしています。自前でつくっているため、現場で「ここが使いにくい」と気づけば、その場で直していけます。

アプローチ 2: ハンドメイド商品の管理とクリエイターとの連携

次に整えたのが、ハンドメイド商品の管理と、クリエイターとのやり取りを支える仕組みです。委託販売では、商品の一つひとつが「誰かの作品」であり、その持ち主との関係づくりが店の土台になります。

商品は、クリエイター単位で登録・管理できるようにしました。誰のどの作品を何点預かっていて、いま何点売れて、何点残っているのか。この情報がシステム上で常に最新の状態に保たれます。店頭の什器と記録がずれる、という委託販売にありがちな悩みを抑えられます。

クリエイターとの連携でも、自前のシステムの強みが生きました。預かり状況や売れ行きを共有しやすくし、やり取りの行き違いを減らします。「言った・言わない」で揉めることなく、同じ情報を見ながら相談できる土台を整えました。これにより、作品を預けてくれるクリエイターとの、データに裏づけられた信頼関係を築けます。

要点

ハンドメイドの委託販売は、商品管理がそのままクリエイターとの関係管理になります。在庫の数字を合わせることと、作り手に安心して預けてもらうことは表裏一体です。自前のシステムだからこそ、両方を同じ仕組みの中で扱えました。

アプローチ 3: 販売情報のリアルタイム共有

3 つめの柱が、販売情報のリアルタイム共有です。委託販売では、自分の作品が売れたかどうかは、クリエイターにとって最大の関心事です。ここを「聞かれてから集計する」運用にしていると、対応のたびに手が止まります。

レジで会計した瞬間に、その売上が記録へ即座に反映される仕組みにしました。店側は、いまどの作品がどれだけ売れているかをすぐに把握できます。日次や月次の締めを待たずに、店頭の状況をそのまま数字で見られる状態です。

この仕組みは、クリエイターにとっての安心にもつながります。自分の作品の売れ行きを、後日の報告を待たずに確認できる状態をつくれます。販売情報が遅れて共有されるほど、作り手は不安になり、店との距離も生まれます。リアルタイムであることが、委託販売の信頼を支える土台になりました。

なぜ「内製・フルスクラッチ」だったのか

この事例で一番強調したいのは、市販のサービスを使わず、自前のシステムをつくったという選択そのものです。委託販売という業態は、汎用の POS や在庫管理ツールが想定する「店の在庫を売る」形と根本的に違います。既製品に業務を寄せると、どうしても無理が生じます。

フルスクラッチで内製したことで、業務の核心にだけ機能を集中させられました。要らない機能に費用や学習コストを払うこともありません。そして何より、運用しながら「ここを変えたい」と思った点を、自分たちの判断ですぐに直せます。これは外部のパッケージに依存していてはできないことです。

要点

内製・フルスクラッチの価値は、最初に完璧をつくることではありません。小さく始めて、現場の声に合わせて磨き込み続けられることにあります。自社で運営し、自社で開発しているからこそ、業務と開発のあいだに余計な伝言ゲームがなく、改善のサイクルを最短で回せました。

加えて、私たちは AI 駆動開発のクリエイティブスタジオです。AI 駆動開発を取り入れることで、こうした業務システムの内製を、現実的な工数とスピードで実現できます。かつては「自前でつくるのは高くつく」と敬遠されがちだった内製を、選びやすい選択肢にできるのが、いまの開発の強みです。

成果

この取り組みは、自社の店舗運営を題材に、自前のシステムで業務をどこまで DX できるかを実証するものでした。定量的な効果測定を主目的にしたわけではありませんが、運用を通じて確かめられた変化を整理します。

  • 委託販売に最適化したレジで、売れた商品を持ち主ごとに正確に記録できるようになった
  • クリエイター単位の在庫と売上を一気通貫で管理し、手作業の集計と転記をなくした
  • 販売情報がリアルタイムに反映され、売れ行きをいつでも確認できる状態になった
  • クリエイターとの情報共有がデータに基づき、行き違いや不安を減らせた
  • 自前のシステムのため、現場の気づきをそのまま機能改善に反映し続けられる体制になった

数字で語れる成果は、運用を重ねながら今後さらに積み上げていく前提です。それ以上に大きいのは、店舗運営という現場の業務そのものを、自分たちのシステムで設計し直せたことにあります。

学びと再利用可能なナレッジ

要点

業務システムの内製で成否を分けるのは、「何を自前でつくり、何はつくらないか」の見極めです。今回は委託販売の肝である「売れた 1 点と持ち主の結びつけ」に機能を集中させ、それ以外は最小限に抑えました。ここを外さないことが、小さく始めて長く使える内製の条件です。

業務の核心にだけ機能を集中させる

委託販売の本質は「預かった作品を持ち主ごとに売り、精算する」ことです。今回はこの一点を最優先に設計し、装飾的な機能は後回しにしました。勘所を押さえれば、残りは運用しながら足していけます。

自社運営だからこそ改善が速い

店舗を運営する自分たちが、開発も担いました。使う人とつくる人が同じであるため、要望が伝言で薄まりません。「ここが不便」と感じた点を、その日のうちに直します。この距離の近さが、内製のスピードを生みました。

AI 駆動開発で内製のハードルを下げる

業務システムの内製は、かつては費用と工数の壁が高い選択でした。AI 駆動開発を取り入れることで、その壁を現実的な水準まで下げられます。小さく始め、運用しながら磨き込む進め方が、内製でも成り立つようになりました。

ありがちな落とし穴

注意

業務システムを内製するとき最も多い失敗は、最初からすべてを盛り込もうとして、完成しないまま頓挫することです。原因は「どうせ自前でつくるなら全部入れたい」という欲張りにあります。委託販売の要所に機能を絞り、小さく動かしてから広げる進め方が、内製を成功させる近道です。

市販ツールに業務を無理やり合わせる

汎用の POS や在庫ツールは「店の在庫を売る」前提でできています。委託販売をそこに押し込むと、転記とすり合わせの手間が際限なく増えます。業態が特殊なら、ツールを業務に合わせる内製が結局は近道になることもあります。

全機能を一度につくろうとする

最初から完璧を目指すと、いつまでも運用を始められません。まずは肝だけを動かし、現場で使いながら足りない部分を見極めます。小さく出して育てる方が、結果的に早く実用に届きます。

つくって終わりにする

内製は、つくった瞬間がゴールではありません。現場の運用に合わせて直し続けて初めて、業務に根づきます。改善を続けられる体制まで含めて設計することが、自前のシステムを生かす条件です。業務そのものの DX を伴走でご一緒する 業務 DX 伴走支援 でも、この「育て続ける」考え方を共通の土台にしています。

よくある質問

Q. 市販のレジや在庫システムでは難しいのですか?

A. 一般的な物販なら市販ツールで十分なことも多いです。一方で委託販売は「預かった作品を持ち主ごとに売り、精算する」という独自の要件があり、汎用ツールでは無理が出やすい業態です。要件が特殊な場合は、自前でつくる方がかえって運用が軽くなることがあります。

Q. 内製はやはり費用が高くつきませんか?

A. かつてはそのとおりでした。ただ AI 駆動開発を取り入れることで、内製の工数とスピードは大きく改善しています。肝心な点に機能を絞り、小さく始めて運用しながら磨き込めば、現実的な費用で自前のシステムを持てます。

Q. どのくらいの期間でつくれますか?

A. 範囲にもよりますが、要点を絞れば初期構築は数週間から 1〜2 ヶ月が目安です。最初から作り込みすぎず、まず動くものを出して、運用しながら育てる進め方をおすすめしています。AI 駆動開発 の進め方とも共通します。

Q. 自分たちの業務に合うか分からないのですが?

A. まずは「どこが一番手間か」「何が独自の要件か」をうかがうところから始めます。そこが内製で解くべき急所です。小さく試せる範囲を一緒に見極めるところからお手伝いします。

まとめ

この事例の本質は、自社で運営する委託販売店の業務を、市販ツールに合わせるのではなく、自前のシステムで設計し直したことにあります。委託販売の急所である「売れた 1 点と持ち主の結びつけ」を軸に、会計・レジアプリ、クリエイター単位の商品管理、販売情報のリアルタイム共有までをフルスクラッチで内製しました。そして自社運営だからこそ、運用しながら改善を続けられる体制まで含めて組み上げています。

業態が特殊で市販ツールに合わない、現場の業務を自分たちのシステムで作り直したい。そうした課題に、私たちは AI 駆動開発のクリエイティブスタジオとして応えます。小さく始める内製は MVP・新規プロダクト開発 として、業務そのものの DX は 業務 DX 伴走支援 としてご一緒できます。まずは 無料相談 からお気軽にご連絡ください。