結論 — 発効は 2026 年 11 月 12 日。新しい要件は 2 つだけ見分ければよい

Anthropic は 2026 年 10 月 8 日に 2026 Usage Policy update を公表しました。改定後の Usage Policy は、2026 年 11 月 12 日に発効します。

変更は多く見えますが、公式発表を読むと性質が 3 種類に分かれます。

  1. 新しい節にまとめ直したもの。欺瞞行為の節の新設と、選挙の節の改称が該当します
  2. 従来の運用を明文化したもの。武器の節と、監視・法執行の節が該当します。公式は「従来の運用を反映した変更」と述べています
  3. 新しく加わる要件。物理ハードウェアに接続して使うときの安全要件と、Claude への虐待行為の禁止が該当します

高リスク用途の人の確認と利用者への告知の要件は、公式発表によると従来から変わりません。節を書き直して、どの用途に掛かるかを答えやすくしました。

したがって、発効日までに自社でやることは、全文の読み込みではありません。自社の用途が 2 つの新しい要件に触れないか、従来から掛かっていた要件を満たしているか、の 2 点を点検すれば足ります。この記事は、変更点の整理と点検の手順を、原文に沿って書きます。

この記事は法的助言ではありません。契約形態による適用の違いや、個別の判断は、法務担当と Anthropic の窓口で確認してください。

変更点の一覧 — 新設・改称・明確化・追加要件

公式発表と Usage Policy の原文で確かめた変更を、性質ごとに並べます。

領域変更の内容性質
欺瞞行為政治・商業を問わない欺瞞行為を 1 つの節にまとめた新しい節に一本化
選挙節名を「Do Not Undermine Democratic Processes」に変え、有権者の欺瞞と選挙の妨害に絞った改称と範囲の整理
武器完成品に限らず、武器を動かすソフトウェアと部品、ドローンなどの自律的な乗り物の武装を明記従来の運用の明確化 (公式の説明)
監視・法執行同意のない追跡、捜査・逮捕・起訴の対象の判断や推薦、監視ツールの構築・改良を明記従来の運用の明確化 (公式の説明)
高リスク用途要件は従来と同じ。節を書き直し、物理ハードウェアの追加要件を加えた書き直し + 物理ハードウェアは追加
Claude への虐待行為継続的で不要な、虐待的・残酷な振る舞いの禁止を新設新設
サポート対象外地域対象外地域にいる人、そこで設立・本社を置く組織、そこの人や組織に過半を所有・支配される組織が対象明確化

武器と監視・法執行の節について「従来の運用を反映した変更」と述べているのは公式発表です。ほかの領域でも運用が変わらないのかどうかは、発表に記載がありません。

FIXITFIXIT

えっ、変更点がこんなにあるけど、全部に対応しないとだめなの?

ShioriShiori

整理すると、性質が違います。新しい要件は、物理ハードウェアと虐待の禁止の 2 つです。ほかは書き方の整理か、従来の運用の明文化です。

欺瞞行為の節 — 偽アカウントや偽ニュースサイトを 1 つにまとめた

新しい節の名前は、原文で「Do Not Engage in Deceptive Campaigns or Artificial Activity」です。公式発表は、政治・商業を問わない欺瞞行為を対象にすると述べています。メッセージの発信元を隠すことや、偽のアカウントや投稿でコンテンツを増幅すること、影響工作のキャンペーンを運用するためのツールや基盤を作ることが含まれます。

背景として、公式発表は 2026 年 9 月の脅威インテリジェンスのレポートを挙げています。国営メディアや政府の宣伝部門、商業企業が Claude を使い、偽アカウントのネットワークや偽のニュースサイトを運用していた、という内容です。

自社のマーケティングで関係するのは、商業目的の偽装です。実在しない人物を装ったアカウントの運用や、発信元を隠した投稿の量産は、この節に当たるかを確かめる対象になります。原文は、偽の人物、アカウント、メディア、組織を作ったり運用したりして、受け手に発信元や、人間と話しているかどうかを誤解させる行為を挙げています。

選挙の節 — 個別ターゲティングの全面禁止は外れた

選挙の節は「Do Not Undermine Democratic Processes」に改称され、有権者を欺く行為と選挙の妨害に絞られました。公式発表が例に挙げるのは、候補者や投票方法についての虚偽の情報の拡散、候補者や選挙管理担当者のなりすまし、投票率を下げる工作です。

注目したいのは、個人に合わせた投票・選挙運動のターゲティングを一律に禁じる規定が削除された点です。公式発表は、他言語での有権者向けの情報作成や、選挙管理担当者による不備修正の通知といった正当な用途まで止めていたため、と理由を述べています。問題のある行為は、欺瞞キャンペーン、監視、プライバシーの節で引き続き禁止されます。

武器と、監視・法執行 — 公式は「従来の運用の反映」と説明

武器の節は、完成した武器だけでなく、武器を動かすソフトウェアと部品、ドローンなどの自律的な乗り物を武装する行為を含むことを明記しました。原文には、無人機や乗り物、自律的なプラットフォームに武器を組み込むこと、武器の運搬システムを開発することが挙がっています。

監視・法執行の節は、全面的に書き直されました。公式発表によると、次の行為が禁止として明記されています。

  1. 同意のない追跡。リアルタイムでも、過去に集めたデータの分析でも対象になります
  2. 法執行や刑事司法の過程で、誰を捜査・逮捕・起訴するかを Claude に決めさせたり推薦させたりすること
  3. 監視を目的としたツールを作ったり改良したりすること

一方で、許される用途も具体的に書かれました。本人が同意した追跡 (不正利用の監視など)、コンテンツのモデレーション、ジャーナリズム、法律の調査です。

武器と監視・法執行の変更について、公式は「以前のポリシーを実際にどう運用してきたかを反映したもの」と述べています。

高リスク用途 — 要件は同じ。物理ハードウェアの要件が加わった

公式発表によると、健康、法的権利、金融、生計、必須サービスへのアクセスに影響しうる使い方では、権限を持つ人が Claude の提案を確認し、必要なら変更できること (human in the loop)、影響を受ける本人に AI を使ったことを伝えることを、従来から求めています。この要件は変わりません。利用者から「自分の用途に要件が掛かるのか」という問い合わせが多かったため、答えやすいように節を書き直した、と説明されています。

新しく加わるのは、物理ハードウェアの要件です。Anthropic の Model Hardware Standard の公開を受けたもので、自律的に物理的な動作をし、人を傷つけうる機器に Claude をつなぐ場合を対象にします。公式発表は、次の 2 点を挙げています。

  1. 資格を持つ運用者が、機器を観察でき、必要なら止められること
  2. Claude との接続が切れたときに、機器が安全な状態を保てること

原文では、この物理的な動作の区分として、乗り物や航空機の動き、力の作用、危険物の制御、人体への作用、安全システムの制御、産業プロセスが挙がっています。

Claude への虐待行為の禁止 — 極端なケースだけが対象

新設されたのは、Claude に対する「継続的で不要な、虐待的・残酷な振る舞い」の禁止です。公式発表は、適用を極端なケースに限ると明言しています。利用者が明確な目的なく繰り返し Claude に残酷に振る舞う場合です。日常的な不満、反論、暗い創作テーマ、モデルのテストや研究には適用されません。

実際の対応は、Claude.ai と Claude Code にすでにある、持続的に虐待的な利用者との会話を Claude が終了できる機能が主になる、と公式は説明しています。

FIXITFIXIT

Claude にきつい言い方をしたら、アカウントが止まるの?

ShioriShiori

公式は、日常的な不満や反論、テストは対象外としています。対象は、目的なく繰り返す極端なケースです。

サポート対象外地域 — 対象の書き方が明確になった

Supported Regions のページに、対象が具体的に書かれました。公式発表によると、使えないのは、対象外の地域に物理的にいる人、そこで設立または本社を置く組織、そこの人や組織に過半を所有または支配される組織です。公式発表は、これが 2025 年の更新の延長にあることに触れています。

対象外地域の一覧は、公式発表には載っていません。どの地域が当たるかは、Supported Regions のページで確認してください。公式発表に日本への言及はありません。

用途別の点検 — 発効日までに自社で確かめること

変更点を自社の用途に当てはめる手順を、用途ごとに整理します。判断に迷うものは、原文と契約を確認するものとして残しています。

自社の用途関係する節確認すること
SNS の運用や、レビュー・口コミの文章の生成欺瞞行為発信元を偽っていないか。実在しない人物を装っていないか
位置情報や行動履歴を使った見守り、従業員のモニタリング監視・法執行本人が同意しているか。同意の取得方法が説明できるか
採用、与信、保険、教育、行政手続きの判断の補助高リスク用途資格を持つ人が内容を確認し、変更できる流れか。本人に AI の利用を伝えているか
医療・法務・金融に関する助言の生成高リスク用途助言が出る前に、資格を持つ人が確認しているか。受け手に AI を使ったと伝えているか
ロボット、ドローン、工場の設備、車両の制御武器、高リスク用途 (物理)運用者が観察して止められるか。接続が切れたときに安全な状態になるか
利用者が Claude と長く会話するアプリ虐待行為の禁止利用規約で、利用者側の継続的な虐待行為への対応を決めているか
海外拠点や、海外資本の出資がある事業サポート対象外地域出資関係と所在地が、Supported Regions のページの記載に当たらないか

高リスク用途の判断では、原文の領域の書き方が手がかりになります。Usage Policy は、法律、医療、金融、与信、保険、住宅、雇用、教育、医療へのアクセス、公的給付、法的な地位の判断といった領域を挙げています。自社の用途がこれらに当たるかを、まず確かめます。

自社のポリシーとの関係

生成 AI の社内利用ルールを整えている場合は、ベンダー側の規約の変更を、社内ルールの見直しのきっかけにできます。社内ガイドラインの考え方は 生成 AI 利用ガイドライン、就業規則との関係は AI 利用の就業規則 で整理しています。

違反時の措置と、公式に記載が無いこと

Usage Policy には、違反が疑われる場合の措置として、警告のほか、アクセスの抑制、制限、停止、終了を行うことがある、と書かれています。

今回の公式発表に記載が無い点を、そのまま書いておきます。

  1. 既存の利用者や契約への猶予期間
  2. 処分の具体的な基準や手順
  3. 日本や日本企業への個別の扱い
  4. 料金や商用条件の変更

上の文言が今回の改定で新しく入ったものか、従来からあるものかは、確認できていません。記載が無いことを「無い」「できない」と読み替えず、必要なら Anthropic の窓口に確認してください。

日本企業が発効日までに確認する 3 つのステップ

発表から発効まで約 5 週間あります。この間にやることを 3 つに絞ります。

  1. Claude を使っている用途を一覧にし、前の章の表に当てはめる。社内ツール、自社プロダクトへの組み込み、顧客向けの提供を分けて書きます
  2. 高リスク用途に当たるものは、資格を持つ人の確認と、本人への AI 利用の告知が、運用で回っているかを確かめる。画面上の文言と、確認者の権限の両方が対象です
  3. 物理ハードウェアにつながる用途があれば、運用者が止められるか、接続が切れたときに安全な状態になるかを確かめる

要点

3 つのうち、自社に関係するのは 1 つか 2 つのことが多いはずです。用途の一覧を作った時点で、点検が必要な範囲はおおむね決まります。

FIXITFIXIT

結局、うちみたいな会社は何から始めればいいの?

ShioriShiori

優先順位で言うと、用途の一覧づくりが最初です。当たる節が見えたら、確認が必要な運用だけに絞れます。

Claude を自社プロダクトに組み込む、または社内に定着させる場面では、規約の確認を設計の段階から組み込んでおくと、規約が変わったときの手戻りが小さくなります。ベンダーの規約を読んだうえで、AI ツールの導入と運用ルールを一緒に整えたい場合は、AI 開発ツール定着支援 で支援しています。ガバナンス設計の見方は Claude for Government の記事 でも、課金形態と管理機能を例に整理しています。自社の用途が当たるかの整理から相談したい場合は、お問い合わせ から個別にご相談ください。