Google Cloud で Claude を使う方式が 2 つになった

公式の リリースノート の 10 月 22 日の項目で、Claude Models on Google Cloud (Anthropic managed) が発表されました。Anthropic が運用する Claude API を、Google Cloud のプロジェクト経由で使う方式です。アクセスは Google Cloud の IAM、課金は Google Cloud Marketplace が担います。

Google Cloud で Claude を使う方法は、これまでも Vertex AI 経由 (現在のドキュメントでは Agent Platform) にありました。公式のドキュメントでは、こちらを Claude Models on Google Cloud (Google managed) と呼んでいます。今は 2 つの方式があり、どちらも請求は Google Cloud に出ます。

この記事は、2 つの違い、使える機能と使えない機能、課金の仕組み、始め方、移す前の確認項目を整理します。内容は Anthropic の公式ドキュメント (概要、Anthropic managed、Google managed) と、Google Cloud の ブログ に基づきます。確認した日は 2026 年 10 月 25 日です。

Claude Opus 5.5 の fast mode をクラウド経由で使いたい場合の条件は、Claude Opus 5.5 の fast mode の使い方 にまとめています。

2 つの方式の違い

Anthropic の概要ページの比較表を、次のように整理しました。

項目Anthropic managedGoogle managed
運用Anthropic が Claude API を運用Google が Agent Platform の一部として運用
API の形式Claude API と同じ (/v1/messages など)Agent Platform の予測エンドポイント
モデルの指定リクエスト本文の modelURL にモデル名
バージョンの指定anthropic-version ヘッダー本文の anthropic_version
ストリーミング本文で "stream": true別のエンドポイント (:streamRawPredict)
ロケーションglobalglobal・マルチリージョン・リージョンから選ぶ
4.6 より前のモデルの IDClaude API の ID (claude-haiku-4-5-20251001)日付の前のハイフンが @ (claude-haiku-4-5@20251001)
Anthropic の組織プロジェクトごとに新しく作るなし
課金Google Cloud MarketplaceGoogle Cloud の Agent Platform の利用料
レート制限Anthropic が管理Google Cloud が管理
IAM ロールroles/claude.viewer・claude.user・claude.adminAgent Platform の IAM ロール
管理画面Claude Console (Google Cloud の画面から開く)Google Cloud のコンソール
SDK のクライアントAnthropicGoogleCloud (ベータ)AnthropicVertex

どちらも Google の資格情報 (Application Default Credentials を含む) で認証し、請求は Google Cloud に出ます。Claude 4.6 以降のモデルは、どちらも Claude API の ID を使います。

Google のブログは、選び方を次のように書いています。違いは、誰がデータ処理者になるか、そして新しい Claude Platform の機能を発表日から使う必要があるかに尽きる、という説明です。Anthropic managed では Anthropic が、Google managed では Google Cloud がデータ処理者です。

使える機能と使えない機能

Anthropic managed では、Claude API の主な機能が使えます。公式の Feature support には、次が挙がっています。

区分使える機能
速度Claude Opus 5.5 の fast mode
ツールWeb 検索・Web フェッチ・コード実行・メモリツール・アドバイザーツール・MCP コネクタ
Skills とファイルAgent Skills、Files API
モデルの機能プロンプトキャッシュ、拡張思考、サーバー側のフォールバック、ストリーミング、構造化出力、トークン数の計測
バッチとモデル一覧Message Batches API、Models API
エージェント基盤Claude Managed Agents (エージェント・環境・セッション・認証情報の保管庫・メモリストア・スケジュール実行・セルフホストのサンドボックス)
暗号化Google Cloud KMS の鍵による CMEK

ベータ機能は、Claude API で組織を限定している場合、Anthropic の組織にも同じ権限が要ります。Compliance API は、Claude Console の設定で有効にします。

公式が非対応と明記しているのは、次の 4 つです。一覧に載っていない機能が使えるかどうかは、書かれていません。

  • API キー。認証は Google Cloud の資格情報だけで、Claude Console で API キーは作れません
  • MCP tunnels
  • セルフホスト環境のセッションでのメモリストア
  • ant CLI や SDK にあらかじめ用意されたセルフホストのワーカー。自前のワーカーで Environments の Work エンドポイントを呼びます

一方、Google managed のページは、使えない機能を次のように挙げています。

区分使えない機能
入力画像・文書の URL 指定、Files API
サーバー側のツールコード実行、Web フェッチ、アドバイザー
エージェント基盤Agent Skills、MCP コネクタ、プログラムによるツール呼び出し、Claude Managed Agents
APIMessage Batches API、Models API、Admin API、Compliance API、Usage and Cost API
フォールバックfallbacks パラメーター (クライアント側の方法で代える)

fast mode は、fast mode のドキュメント の対応基盤の一覧に、Claude API、Microsoft Foundry (Azure ホストの配備)、Anthropic managed が載っています。Google managed は載っていません。Anthropic managed で Claude Opus 4.6 に speed: "fast" を付けると、beta ヘッダーを付けても 400 エラーになります。Claude API では標準の速度で処理されるため、扱いが違います。

料金と課金の仕組み

Anthropic managed の課金は、Google Cloud Marketplace を通ります。Anthropic が利用量を計測し、Claude Consumption Unit (CCU) で Google Cloud に報告します。1 CCU は 0.01 USD です。請求は Google Cloud の請求書に載り、Anthropic から別の請求書は届きません。Google Cloud の支払いの約定がある場合、利用は他の Marketplace の購入と同じように約定に数えられます。使用量と費用は、Claude Console の Usage と Cost のページで確認できます。

単価はどうなるのでしょうか。確認できた範囲で、書き分けます。

出どころ内容
Anthropic の料金ページAnthropic managed のモデル別の単価表は無い。US 限定推論の 1.1 倍と fast mode の料金は、Anthropic managed にも適用すると書く
Google Cloud のブログ2 つの方式で、同じモデルを発表日から、同じ料金、同じ Google Cloud の請求で使えると書く
Google Cloud の Anthropic managed のドキュメントMarketplace では、正規価格のほか、交渉による割引やプライベートオファーで購入できる
Anthropic の Google managed ページマルチリージョンとリージョンのエンドポイントは、グローバルより 10% 高い。10% 高くなるのは Claude Sonnet 4.5 以降のモデルで、リージョンのエンドポイントは Claude Sonnet 4.6 以前のモデルだけ

つまり、同じ料金という説明は Google 側のものです。Anthropic のドキュメントにはモデル別の単価が無いので、金額を決める前に、Marketplace の掲載内容か Anthropic の窓口で確認してください。既存の割引がある場合は、手順を始める前に Anthropic か Google Cloud の担当者に連絡するよう、公式が書いています。割引は過去の利用には適用できません。

米国内だけで推論したい場合は、ロケーションを global のままにして、リクエストごとに inference_geo: "us" を指定します。ロケーションと推論の場所は別の設定です。Data residency のページによると、inference_geo の値は global と us の 2 つで、Anthropic managed の既定は global です。

料金ページ によると、Claude 4.6 以降のモデルで inference_geo: "us" を指定すると、入力・出力・キャッシュの書き込みと読み込みのすべての単価が 1.1 倍になります。Anthropic managed にも適用すると明記されています。それより前のモデルは inference_geo に対応せず、指定すると 400 エラーになります。

始め方

公式の手順は、次の流れです。必要な権限は、Marketplace での購入、プロジェクトでのサービスの有効化、Claude Console を開ける IAM ロールの 3 つです。

  1. Google Cloud Marketplace で Claude Models on Google Cloud (Anthropic managed) を購読する
  2. プロジェクトで claude.googleapis.com と anthropic-managed-claude.cloudpartnerservices.goog の 2 つのサービスを有効にする
  3. Claude のページで Activate を押し、連絡先のメールアドレスで Anthropic の組織を作る。このとき Anthropic の Commercial Terms of Service と Usage Policy に同意する
  4. Open Claude Console から Claude Console を開き、ワークスペース ID (wrkspc_ で始まる) を控える

この手順は、プロジェクトに新しい Anthropic の組織を作ります。すでにある Anthropic の組織とは別で、Claude Enterprise の組織とも別です。別のプロジェクトを足すときは、手順 2 からやり直します。

呼び出しには、roles/claude.user を、呼び出すユーザーかサービスアカウントに与えます。ロールは 3 つです。

ロールできること
roles/claude.viewerワークスペースの資源の参照だけ。ファイルの中身、バッチの結果、セッションのイベントの全履歴も読める
roles/claude.user参照に加えて、メッセージの送信、トークン数の計測、バッチ・ファイル・Skills・Managed Agents の管理
roles/claude.adminuser に加えて、Anthropic の組織に対する操作。Claude Console を開けるのはこのロールだけ

ロールはプロジェクトに与えるため、プロジェクト内のすべてのワークスペースに適用されます。チームごとにアクセスを分けたいときは、チームごとに Google Cloud のプロジェクトを分けます。

claude.googleapis.com を有効にすると、プロジェクトにサービスエージェントが作られます。そのロールの付与を消すと、プロジェクトで Anthropic managed が動作しなくなるため、消さないでください。

SDK は、環境変数でプロジェクトとワークスペースを渡します。

pip install -U "anthropic[google_cloud]"
export ANTHROPIC_GOOGLE_CLOUD_PROJECT="my-project-id"
export ANTHROPIC_GOOGLE_CLOUD_WORKSPACE_ID="wrkspc_01AbCdEf23GhIj"
gcloud auth application-default login
from anthropic import AnthropicGoogleCloud
 
client = AnthropicGoogleCloud()
 
message = client.messages.create(
    model="claude-opus-5-5",
    max_tokens=1024,
    messages=[{"role": "user", "content": "Hello, Claude"}],
)

curl で直接呼ぶ場合は、Claude API との違いが 3 つあります。URL にプロジェクトとワークスペースが入ること、認証は Authorization: Bearer に Google のアクセストークンを置くこと、x-api-key ヘッダーと anthropic-workspace-id ヘッダーは送らないことです。リクエスト本文、anthropic-version、ストリーミング、応答は Claude API と同じです。SDK のクライアントは、ANTHROPIC_API_KEY・ANTHROPIC_AUTH_TOKEN・ANTHROPIC_BASE_URL を無視します。

Vertex AI から移す前の確認

Google managed から移す手順は、公式のページに 6 つ並んでいます。コードの書き換えは、クライアントの差し替えが中心です。ただし、確認する点は次のとおりです。提供終了したモデルの行は、Anthropic の 料金ページ の記載です。

確認する点内容
クライアントAnthropicVertex から AnthropicGoogleCloud へ。cURL は URL・ヘッダー・本文を変える
モデルの ID4.6 より前のモデルは、@ を日付の前のハイフンに戻す
機能使っている機能が、非対応の一覧に入っていないか
ロケーションマルチリージョンやリージョンを使っているなら、global になることを確認する
提供終了したモデルClaude Opus 4・Claude Haiku 3.5 は、Google managed を除いて提供終了。Claude Opus 4.1・Claude Sonnet 4 は、Bedrock と Google managed を除いて提供終了
レート制限新しい組織は Anthropic の管理。本番の通信を移す前に確認する
ZDRZDR に頼るワークロードは、移す前に Anthropic の担当者に依頼する。他の組織の取り決めは引き継がれない
FIXITFIXIT

クライアントを差し替えるだけで移れるの?

KanameKaname

コードはそれで済む箇所が多いです。ただ組織が新しく作られるので、レート制限や ZDR の確認が別に要ります。

FIXITFIXIT

いっぺんに切り替えて、うまくいかなかったら?

KanameKaname

公式の手順でも、テストのリクエストを通してから自分のコードを動かします。現場では、ワークロードを少しずつ移すのが安全です。

Managed Agents を使う場合は、アクセスの確認が作成時にだけ行われる点に注意してください。実行中のセッションは、作成したユーザーの Google Cloud へのアクセスを取り消しても止まりません。止めるには、user.interrupt イベントを送ります。スケジュール実行も、作成者のアクセスを毎回は確認しません。ユーザーの削除やサービスアカウントの入れ替えをしたら、その ID が作ったセッションと配備を見直してください。

Claude API を直接契約している組織から移る場合

Google managed ではなく、Claude API を直接使っている Anthropic の組織から移る場合は、公式の別の節に手順があります。既存の組織は、Anthropic managed 用の組織に変換できません。新しい組織への切り替えとして計画します。

  • API キー、ワークスペース、Claude Console の設定は引き継がれない。API キーの代わりに IAM ロールを与え、ワークスペースは作り直す
  • 他の組織の ZDR の取り決めは引き継がれない
  • ファイル・Skills・バッチ・Managed Agents のリソースは、元の組織に残る
  • 2 つの組織は独立していて、並行して通信を受けられる。ワークロードは少しずつ移せ、元の組織の請求はそのまま続く
  • 本番の通信を移す前に、Anthropic managed のレート制限を確認する

ログとデータの扱い

Anthropic managed では、Anthropic がデータ処理者です。信頼と安全のシステムなど、一部の補助サービスは Google Cloud の外でデータを処理します。データの保持は Claude API と同じ方針で、ZDR は依頼すれば使えます。

保存するデータの場所 (workspace geo) は、すべてのワークスペースで米国 (us) に固定され、変更できません。Data residency のページによると、workspace geo は保存データの場所に加えて、画像の変換やコード実行などの処理を行う場所も決めます。

Cloud Audit Logs には、API の記録が claude.googleapis.com のサービスで残ります。メッセージ・バッチ・ファイルなどのデータアクセスログは、既定では無効です。リクエストの記録を残すなら、プロジェクトの監査ログの設定で有効にします。暗号化の鍵に関する操作などの管理アクティビティのログは、常に有効です。

どちらを選ぶか

判断の軸を、公式の記載から次のようにまとめます。

状況向いている方式
新しい Claude Platform の機能を、発表日から使いたいAnthropic managed
Managed Agents・Skills・コード実行・Batches・Files API が要るAnthropic managed (Google managed は非対応)
データ処理者を Google Cloud にしたいGoogle managed
すでに Agent Platform の IAM と割り当てで運用しているGoogle managed を続ける選択肢がある。移すならクライアント・IAM ロール・レート制限を見直す
VPC Service Controls を使いたい、データの所在を米国・EU・アジア太平洋から選びたいGoogle managed
既存の Google Cloud の契約の下で使いたいGoogle managed
コードで API キーを使っているAnthropic managed は API キーを使えないため、Google の資格情報への切り替えが要る

Google のブログは、Google managed を、厳しいガバナンス・コンプライアンス・主権の要件がある場合に向けた方式として紹介しています。同じブログは、Google managed が VPC Service Controls、CMEK、米国・EU・アジア太平洋 (APAC) のデータの所在を備えると書いています。CMEK は、Anthropic managed でも Google Cloud KMS の鍵で使えます。

契約も違います。Anthropic managed は、組織を作るときに Anthropic の Commercial Terms of Service と Usage Policy に同意します。Google managed は、既存の Google Cloud の顧客契約の下で Google Cloud がデータ処理者になります。

公式に記載が見つからなかった点

次の点は、確認した公式ページに記載が見つかりませんでした。契約や設計の前に、Anthropic か Google Cloud の窓口で確認してください。

  • Anthropic managed のモデル別の単価
  • Anthropic managed の稼働率の保証 (SLA)

記載が無いことは、使えないという意味ではありません。

VPC Service Controls と FedRAMP は、Anthropic managed で使えるかどうかを明記したページはありません。ただし Google Cloud のドキュメントは、VPC Service Controls の境界の内側で完結させたい場合や、FedRAMP High・IL4・IL5・SOC・ISO・HIPAA などの Google Cloud のコンプライアンスの対象に入れたい場合は、Google managed を使うよう案内しています。CMEK は Anthropic managed でも使えると書かれています。

FIXIT の受け止め

私たちは、クラウド経由で AI を使うときの確認項目を、機能・課金・組織・ログの 4 つに分けて見ると、選定の抜けを防ぎやすいと考えています。今回のように同じ Claude を 2 つの方式で使えるときは、機能の対応、課金の窓口、データ処理者、ログの設定が分かれ目になります。

AI 駆動開発では、モデルやクラウドの提供形態が短い間隔で変わります。契約を決める前に、一次情報のページで機能の可否を確認し、記載が無い点を一覧にする型を持っておくと、社内の説明がしやすくなります。API 側の更新の見方は Claude API 2026-10-21 と SDK 更新 で、モデル更新の見方は Claude Opus 5.5 とは で整理しました。

まず今の呼び出しを棚卸しする

移す前の第一歩は、今 Vertex AI 経由で呼んでいる Claude の機能と、モデルの ID を一覧にすることです。使っている機能が、新しい方式の対応表に入っているかを確認するだけでも、切り替えの可否を判断しやすくなります。

クラウド経由での AI の導入や、社内への定着の仕組みづくりは AI 開発ツール定着支援 で、AI を組み込んだプロダクト開発は AI 駆動開発 でお手伝いしています。個別のご相談は お問い合わせ から承っています。