Mercury 3 は何が発表されたのか

Inception Labs は、拡散方式の LLM「Mercury 3」を発表しました。公式ブログの一覧では、日付は 2026 年 10 月 19 日、見出しは「Diffusion at Scale: Introducing Mercury 3」です。

公式ブログによると、使える場所は Inception API Platform のほか、OpenRouter・Baseten・Vercel です。API Platform には 1 億トークンの無料枠が付くと書かれています。

この記事は、公式ブログと公式ドキュメントに書かれていることだけで整理します。書かれていない条件は「確認できなかった」と書き、推測では埋めません。記載は 2026 年 10 月 20 日に確認したものです。

基本仕様を一覧で確認する

公式ドキュメントのモデル一覧から、Mercury 3 の項目を抜き出します。

項目内容
モデル IDmercury-3
エンドポイントv1/chat/completions
コンテキスト1M トークン (Chat)
最大出力131,072 トークン
対応機能Tool Calling、Structured Outputs
入出力の形式Text
reasoning effortinstant、low、medium、high から選べる
Temperature0.5〜1.0 で調整できる

コンテキストについて、公式ブログは「Mercury 2.5 の 260K から 1M に広がった」と書いています。画像や音声は対応形式に載っておらず、テキスト専用のモデルとして扱うことになります。

拡散型 LLM とは何か、公式が説明している範囲

Mercury 3 の発表記事は、このモデルを diffusion-based な LLM と紹介しています。ただ、確認できた範囲では、拡散の仕組みそのものは説明されていません。

仕組みを知りたいときは、初代 Mercury の論文 Mercury: Ultra-Fast Language Models Based on Diffusion (2025 年 6 月) が手がかりになります。論文のアブストラクトは、Transformer の構成で、複数のトークンを並列に予測するよう学習したモデルだと書いています。左から 1 トークンずつ書き進める従来の方式との違いは、複数のトークンをまとめて予測する点です。

この説明は初代 Mercury の論文のものです。Mercury 3 がどこまで同じ構成かは、確認できた公式の記載からは分かりません。

速度とベンチマークの発表値をどう読むか

公式ブログは、速度を「NVIDIA GPU 上で 1,068 トークン/秒」と書いています。ほかのモデルとの比較は、Mercury 3 が複数のベンチマークで GPT-6 Luna と Claude Haiku 5.5 を上回り、1,000 トークン/秒以上で 4〜8 倍速く動く、という書き方です。

この数字を採用の根拠にする前に、次の点を分けて読みます。

  • どちらも Inception Labs 自身が発表した数字で、第三者の計測ではない
  • 入力と出力の長さ、同時実行数、比較相手の設定は、確認できた範囲に記載がない
  • 4〜8 倍が何と比べた倍率かは、確認した範囲では読み取れなかった
  • 「複数のベンチマーク」の名前と点数も、確認した範囲では読み取れなかった

初代 Mercury の論文では、速度を Artificial Analysis が独立に評価したと書かれていました。Mercury 3 についての第三者の計測は、2026 年 10 月 20 日時点で確認できていません。

FIXITFIXIT

1,000 トークン/秒って、うちの用途でも出るの?

HayateHayate

出るかは測らないと分かりません。入力の長さと同時実行数で変わるので、自分のプロンプトで測るのが確実です。

料金と launch 価格

公式ドキュメントの料金は、100 万トークンあたり次のとおりです。

区分launch 価格通常価格
入力$0.10$0.20
キャッシュ入力$0.01$0.02
出力$0.35$0.70

公式ブログは「At launch, Mercury 3 is 50% off」と書いています。割引の終了日は、公式ドキュメントにも記載が見当たりませんでした。platform.inceptionlabs.ai で確認できる可能性がありますが、ログインが必要なページのため、本記事では確認できていません。

上の表は公式の表示額 (USD) です。日本の消費税の扱いは、契約時に確認してください。

費用を見積もるときは、通常価格で計算しておくのが安全です。launch 価格で組んだ試算は、割引が終わると倍になります。試算の手順はLLM のコスト最適化の記事にまとめています。

使い始めるときの手順

エンドポイントは v1/chat/completions で、モデル ID に mercury-3 を指定します。公式ブログは OpenAI の API と互換と書いています。リクエストの書式や認証の詳細は、公式ドキュメントで確認してください。

次の順で試すと、手戻りを抑えられます。

  1. 無料枠で、実際の入力を使って呼び出す
  2. reasoning effort を instant から high まで変え、品質と速度を比べる
  3. ツール呼び出しと構造化出力が、自社のスキーマで通るかを確かめる
  4. 通常価格で月額を試算する

reasoning effort の段階ごとに、速度と品質がどう変わるかは、公式の記載から読み取れませんでした。ここは自分で測る項目です。

自社のタスクで測るときの確認項目

採用は発表値ではなく、自社のタスクで測った次の項目で決めます。

確認項目見方
出力の品質いま使っているモデルと同じ入力を流し、人が比べる
応答時間最初のトークンまでの時間と、最後までの時間を分けて測る
同時実行時の速度本番に近い同時リクエスト数で測る
ツール呼び出し自社のツール定義とスキーマで、呼び出しと引数が正しいかを見る
費用通常価格で、入力・出力・キャッシュ入力の量から月額を出す

評価の組み方はLLM 評価ハーネスの記事で扱っています。

FIXITFIXIT

結局、乗り換えたほうがいいの?

HayateHayate

乗り換えの前に、待ち時間が問題になっている工程だけで試すのが現実的です。

FIXIT のモデル選定の見方

当社は Mercury 3 を動かして検証していません。導入実績を示す段階でもありません。この記事の内容は、公式ブログ、公式ドキュメント、初代 Mercury の論文の記載を読んで整理したものです。

モデル選定を相談されたときは、ベンチマークの順位より先に、どの工程の待ち時間を縮めたいのか、品質が落ちたときに誰が気づくのかを確認します。

AI 開発ツールを組織に定着させる支援は、AI 開発ツール定着支援で扱っています。

まとめ

論点確認できたこと
発表2026 年 10 月 19 日に Inception Labs が発表した拡散型 LLM
仕様mercury-3、1M コンテキスト、最大出力 131,072、ツール呼び出しと構造化出力に対応
料金launch 価格は入力 $0.10・出力 $0.35。通常は $0.20・$0.70。終了日は確認できず
速度公式は NVIDIA GPU 上で 1,068 トークン/秒と書く。第三者の計測は確認できず
確認できず日本語の性能、ベンチマークの名称と点数、速度の測定条件

Mercury 3 は、速度を前面に出した 1M コンテキストの拡散型 LLM として、試す価値のある選択肢です。ただ、確認できた数字はすべて発表側のものです。無料枠で自社の入力を流し、通常価格で試算してから判断してください。

ローカルで動かす選択肢との比較はローカル LLM の解説に、モデル選定や AI 開発ツールの導入に関するご相談はお問い合わせにお寄せください。