結論 — 確定していることと、10 月末まで分からないこと

2026 年 10 月 6 日、Mistral AI が Mistral Large 4 を Public Preview として API で提供し始めました。公式ドキュメントのモデルページ によると、API 名は mistral-large-4 と mistral-large-4-0、バージョンは 26.10、コンテキストは 1M トークンです。入力はテキストと画像、出力は推論とテキストです。

いま確定していること、まだ確定していないことは、次のように分かれます。

項目状態
API 名・提供状態・コンテキスト公式ドキュメントに記載あり
料金 (100 万トークンあたり)公式ドキュメントに記載あり
open weights の公開日公式に日付の記載なし。「Coming soon」「月末までに公開」
ライセンス確認した公式ページに名前の記載なし。一覧の欄は「Open」のみ
active パラメータ数52B と 49B の表記が混在
ベンチマークの数字主に Mistral の報告値。vals.ai などの第三者の評価もある

立場ごとに、やることは次のとおりです。API で試す人は、Public Preview であることを前提に、評価用の少量のリクエストから始めます。重みを待つ人は、日付とライセンスが出てから動き出せば足ります。発注側の立場の人は、「Mistral Large 4 を使えます」という提案を受けたときに、どの提供形態の話かを聞けば十分です。

自社でモデルを動かす場合の一般論は オープンウェイトモデルを自社運用する判断基準 にまとめています。

仕様 — 公式ドキュメントで確認できた範囲

モデルページの記載を、そのまま表にします。

項目内容
API 名mistral-large-4、mistral-large-4-0
バージョン26.10
提供状態Public Preview
公開日2026 年 10 月 6 日
コンテキスト1M トークン
入力テキスト、画像
出力推論、テキスト
構成合計 1.05T、active 52B、ビジョンエンコーダ 1.6B
対応機能structured-outputs、function-calling、document-qna、prefix、chat-completions、batching、agents-conversations、connectors

構造は Mixture-of-Experts です。発表記事 は、約 1 兆パラメータで、ネイティブにマルチモーダルなモデルだと説明しています。提供形態については、Mistral Studio の Public Preview API を挙げています。欧州のデータセンターで学習・提供していることと、複数のリージョンで提供する予定があることも書かれています。セキュリティ用途では、プライベートクラウドやオンプレミスでも運用できるようになるとしています。

モデル一覧のページ では、Mistral Large 3 も引き続き現行のモデルとして載っています。Large 4 の公開で Large 3 が廃止されるという記載は、確認した範囲にはありません。

料金 — 100 万トークンあたり、入力 $1.36・出力 $4.18

モデルページの単価は、次のとおりです。

項目100 万トークンあたり
入力$1.36
キャッシュ入力$0.14
出力$4.18

キャッシュ入力の単価は、通常の入力の約 10 分の 1 です。同じ長い前提 (社内文書やコードベースの要約など) を何度も渡す使い方では、この差が請求額に表れます。

見積もりの手順は、次のとおりです。

  1. 1 回のリクエストの入力トークン数と出力トークン数を、実データで数える
  2. 前提の文書を繰り返し渡す場合は、そのうちキャッシュに当たる割合を決める
  3. 月間のリクエスト数を掛け、入力・キャッシュ入力・出力ごとに単価を掛けて合計する

円換算の金額は、為替レートと契約形態で変わるため、本記事では計算しません。

Mistral の changelog の 10 月 6 日の項目には、公開記念として 2 週間 50% 引きとあります。10 月 21 日時点のモデルページは、上の表の単価だけを表示しています。割引の終了日は明記されていないので、見積もりには上の表の単価を使ってください。日本の消費税の扱いは、確認した範囲では見つかっていません。

FIXITFIXIT

半額は 2 週間だけだったよね。いまから見積もるなら、どの値段なの?

TsumikiTsumiki

モデルページに出ている単価で計算すれば足ります。

FIXITFIXIT

でも、うちの使い方で月にいくらかかるのか、見当がつかないんだよね。

TsumikiTsumiki

まず API に自社の課題を少し投げて、トークン数を数えるのが早いです。

open weights — 公式が書いていることと、書いていないこと

Mistral Large 4 は「open weights で公開される」と案内されていますが、2026 年 10 月 21 日時点で重みは公開されていません。公式の記載を並べます。

出典記載
モデルページopen weights は「Coming soon」。日付は載っていない
発表記事「月末までに重みを公開する」
Hugging Face の予定ページ予定のリポジトリ名が mistralai/Mistral-Large-4-1T-A52B。「Upcoming release」の表示で、目安の日付は 10 月 31 日

Hugging Face のページは予定の表示で、ダウンロードできるリポジトリではありません。「月末」という表現と 10 月 31 日の目安は矛盾しませんが、Mistral が日付を約束したわけでもありません。10 月 27 日とする報道も出ていますが、公式の記載では確認できませんでした。

ライセンスは、確認した公式ページに名前が書かれていません。 モデルページ、発表記事、Hugging Face の予定ページのいずれにも、ライセンス名の記載はありません。モデル一覧のページ のライセンス欄は「Open」の表示だけです。同じモデル一覧で、Mistral Large 3 は Apache 2.0 と記載されています。ただし、Large 4 も同じになるという記載は、確認した範囲にはありません。商用利用・再配布・改変の可否は、重みの公開時にリポジトリへ付くライセンス文書を読むまで決まりません。

注意

「open weights」という言葉は、ライセンスの種類を示すものではありません。重みを公開しても、商用利用や再配布に条件が付くことがあります。公開された時点で、ライセンス文書の適用範囲を最初に読んでください。

重みを自社で運用できるかどうかは、モデルの規模にも左右されます。公式に必要なメモリの記載はありません。合計で約 1 兆パラメータの規模なので、手元の 1 台で扱える大きさではなさそうですが、数字は重みの公開後にモデルカードで確認してください。小さな規模のオープンモデルを手元で動かす話は Gemma 4 12B の記事 と ローカル LLM の入門 で扱っています。

数字が食い違う箇所 — active パラメータ 52B と 49B

active パラメータ数は、出典によって表記が違います。

出典記載
公式ドキュメントのモデルページ合計 1.05T、active 52B、ビジョンエンコーダ 1.6B
発表記事約 1 兆、active 52B
Hugging Face の予定ページ約 1 兆のうち 49B が 1 トークンあたりの active。埋め込みと出力層を含めると 52B

Hugging Face の予定ページの書き方からは、埋め込みと出力層を含めるかどうかで 49B と 52B に分かれている可能性があります。ただし、公式はこの食い違いを説明していません。二次情報の中には 49B を発表記事の値として紹介するものもあり、出典を読み比べないと混乱します。

GPU メモリの見積もりに使う数字は、重みの公開後にモデルカードの値で取り直すのが確実です。

ベンチマーク — Mistral が報告した数字の読み方

発表記事には、Mistral が報告したベンチマークの数字が並んでいます。主なものを引きます。

分野Mistral の報告
コーディングDeepSWE v1.1 で 61.7%、Terminal-Bench 4 で 28.3%
エージェントAutomationBench で 59.9%
サイバーセキュリティCybench で 93%
安全性Lakera の B3 ベンチマークで 93.3% の攻撃に耐えた

どれも Mistral が発表記事に書いた数字で、比較対象も Mistral が選んだ組み合わせです。発表記事は第三者の評価にも触れています。Artificial Analysis Cyber Index を独立した評価として挙げ、法務・金融のタスクは vals.ai で評価したと書いています。vals.ai のモデルページ では、Terminal-Bench 4.0 が 27.78% です (Mistral の報告値は 28.3%)。本記事では、これ以外の数字を第三者の評価と突き合わせていません。

数字の使い方は、次の 2 つに分けると安全です。

  • 社内への報告では、「Mistral の報告値」と出典を添える
  • 採用の判断では、自社の作業 (実際のコードベースや業務文書) で Public Preview の API を使い、結果を比べる

比較の進め方は LLM の評価ハーネスを組む記事 で扱っています。

立場別に、いまやること

API で試したい人

Public Preview の API は、すでに使えます。評価用の少量のリクエストで、自社の課題との相性を確かめます。Public Preview の間は仕様や価格が変わる可能性があるため、本番の経路に直接つなぐ前に、モデル名を設定で切り替えられる作りにしておくと、後の差し替えが楽です。

重みを待っている人

日付とライセンスが出るまで、計画は仮置きにします。調達や契約は、ライセンス文書を読んでから確定させます。重みが公開された後のモデルカードで、必要なメモリと対応する推論環境を確認してください。

発注側の立場の人

開発会社から「Mistral Large 4 を使います」と提案されたら、API の利用なのか、自社環境での運用なのかを聞いてください。API の利用なら Public Preview を前提にした話で、自社環境での運用なら重みとライセンスが確定する前の話です。特定のモデルに依存しすぎない設計は AI 開発のベンダーロックインを避ける記事 にまとめています。

10 月末に確認する項目

重みが公開された日に、次の項目を順に確認します。

  1. Hugging Face の mistralai/Mistral-Large-4-1T-A52B が実在し、重みがダウンロードできるか
  2. ライセンス文書の名前と、商用利用・再配布・改変の条件
  3. モデルカードに書かれた active パラメータ数と、必要なメモリの目安
  4. 公式が案内する推論環境 (対応するフレームワークとバージョン)
  5. API 名と料金が、Public Preview から変わっていないか
  6. Mistral Large 3 の扱いが変わっていないか

FIXIT の受け止め — 数字より先に、出典と範囲を揃える

Mistral Large 4 は、API が先に使え、重みは後から公開されるという、二段階の出し方をしています。そのため、「使える」「公開される」「商用で自由に使える」が、別々の事実として並びます。ひとつ目だけが確定していて、残りは公式の記載がまだありません。

FIXIT は AI 駆動開発のクリエイティブスタジオとして、新しいモデルが出たときに、公式の記載がある範囲と、報道や推測の範囲を分けて整理するようにしています。モデルの選定は、ベンチマークの順位よりも、自社の作業で測った結果と、ライセンスや運用条件の確認で決めるほうが後から崩れません。

次の一歩は、評価用の課題を 1 つ決めておくことです。Public Preview の API で試した結果と、10 月末に公開される重みの条件を、同じ課題で見比べられます。

モデルの評価や、運用ルールの整備を一緒に進めたい場合は AI 開発ツール定着支援 で、AI を組み込んだプロダクト開発そのものは AI 駆動開発 でお手伝いしています。LLM の費用を抑える設計は LLM のコスト最適化の記事 も参考になります。個別のご相談は お問い合わせ から承っています。