Microsoft Copilot harness は何を任せられるか

Microsoft は 2026 年 10 月 28 日 (米国時間)、Foundry Agent Service で「Microsoft Copilot harness」を公開プレビューとして発表しました。エージェントが考え、ツールを使い、長い作業を進めるための実行ループとサンドボックスを、Microsoft が運用します。利用者は、知識、手順、ツールを用意します。

あわせて、GitHub Copilot SDK が Microsoft Copilot SDK に名前を変えることも、SDK の公式リポジトリに書かれています。この記事では、次の 3 点を公式の資料から整理します。

  • harness で何ができ、どんな条件で使えるか
  • 12 月 1 日から何に課金されるか
  • Copilot SDK の改称で、いま何を変えるか

読む資料は、Foundry ブログの発表記事、Microsoft Learn の使い方と制限のページ、GitHub のCopilot SDK の README です。FIXIT が harness を実機で検証した結果ではなく、2026 年 10 月 30 日時点の公式情報の整理です。

harness は、プロンプトエージェントの任意のランタイム

Learn の使い方のページでは、Copilot harness を「プロンプトエージェント向けの、任意のマネージドランタイム」と説明しています。Foundry が harness と実行環境を運用するため、harness のコードを配備・保守する必要はありません。

harness を選んでも、変わらない部分があります。

  • リソースの種類は、プロンプトエージェントのままです
  • モデル、指示文、ツールなどを定義する点は同じです
  • アプリケーションからは、これまでどおり Responses API で呼び出します
  • アクセスは、Foundry のプロジェクトロール、エージェントの ID、接続、ポリシーで制御します

発表ブログは、harness の構成要素として次の 4 つを挙げています。

構成要素内容
再利用できるスキル指示、スクリプト、リソースをまとめ、複数の作業で使う
接続するツールFoundry と MCP のツール。認証と承認は明示的に設定する
実行と委任ファイルやコードを扱い、決まった範囲の作業をサブエージェントに任せる
ソース管理できるエージェント定義アプリケーションのコードと並べて、定義を管理する

自前で動かす hosted agent との使い分け

Learn は使い分けの目安を書いています。サポートされる複数手順のツール、スキル、ファイル、コマンドの作業を、Foundry に運用してもらいたいなら、harness です。フレームワーク、オーケストレーション、ミドルウェア、実行時のポリシー、依存関係、プロセスの構成を自分で持つ必要があるなら、hosted agent を使います。

FIXITFIXIT

結局、自分でエージェントの土台を作らなくていいってこと?

TsumikiTsumiki

土台の運用は Foundry に任せられます。ただ、使えるリージョンやモデルは制限のページで決まるので、先に見ておくのが早いです。

組み込みのツールと、設定で変えられること

Learn の使い方によると、harness には 5 つの組み込みツールがあります。新しいエージェントでは、設定を変えない限り 5 つとも有効です。

ツールできること設定名
ファイル読み取り作業領域のファイルを読み、検索するfilesystem_read
ファイル書き込み作業領域のファイルを作成・変更するfilesystem_write
シェルOS のコマンドを実行するshell
WebURL の内容を取得するweb
サブエージェント別のエージェントに作業を任せるsubagents

設定名は、Azure Developer CLI の azure.yaml で使う名前です。ポータルでは、エージェントの Tools から Harness tools を選び、有効・無効を切り替えます。harness の選択自体は、azure.yaml では次のように書きます。

services:
  <agent-service-name>:
    host: azure.ai.agent
    kind: prompt
    harness:
      type: microsoft_copilot_preview

組み込みツールの承認方針は、プレビューの間はサービスが管理します。require_approval の設定は、利用者が設定する MCP ツール向けで、組み込みツールには適用されません。

シェルを残したままの絞り込みに注意する

Learn は、組み込みツールの中でシェルのできることが最も広いと注意しています。シェルのコマンドは、環境が許す範囲でファイルを読み書きし、ネットワークにも接続できます。シェルを有効のままにすると、ファイル読み取り・ファイル書き込み・Web を無効にしても、厳密なセキュリティの境界にはなりません。

権限を絞るなら、既定をすべて無効にしたうえで、使うツールだけを個別に有効にする書き方が案内されています。外向きの通信を管理したい場合は、責任ある AI (RAI) ポリシーのネットワーク規則をエージェントに付ける方法があります。この機能もプレビューです。

使える条件|リージョン・モデル・非対応の機能

制限のページに、プレビューの条件が表でまとまっています。主な項目は次のとおりです。

項目内容
対応リージョンAustralia East・Canada Central・Central US・Germany West Central・Japan East・Sweden Central・UK South・West Europe・West US
モデル推論とツール呼び出しに対応するもの。プロジェクトのリージョンでプロンプトエージェントに使えるものを選ぶ
独自モデルの持ち込み未対応
スキル最上位の参照が 50 件まで
作業領域会話ごとに分かれる
Foundry Memory未対応
入力HTTP でテキスト、画像、ファイル。音声入力と WebSocket は未対応

日本のリージョンは、Japan East が対象です。また、エージェントの作成と呼び出しに使う ID には、プロジェクトの Foundry User ロールが必要です。

エージェントの定義と呼び出し方にも制約があります。

  • すべてのリクエストに conversation が必要です
  • store は省略するか true にします。store: false と previous_response_id は未対応です
  • エージェントの定義の temperature、top_p、tool_choice など、リクエストの max_output_tokens、parallel_tool_calls などは、harness が管理するため指定しません
  • 未対応の項目は、無視されずにエラーになります

作業領域は会話ごとに分かれ、ファイルと実行の状態を持ちます。サンドボックスは Foundry が待機・再開・交換するため、大事な出力は Foundry Files などの永続的な場所に保存するよう、Learn は案内しています。

既存のエージェントには追加できない

発表ブログと Learn のどちらにも、プレビューの間は harness を作成時にだけ選べると書かれています。既存のプロンプトエージェントに後から付けることも、作成後に切り替えることもできません。新しいバージョンを作っても、harness は変わりません。

すでに稼働しているエージェントを harness に移したいなら、新しいエージェントとして作り直すことになります。呼び出し側の Responses API の使い方も、前の節の制約に合わせる必要があります。

12 月 1 日からの課金

発表ブログによると、Copilot harness の課金は 2026 年 12 月 1 日に始まり、従量課金です。12 月 1 日より前は、harness のランタイムの利用は無料です。

12 月 1 日からの、サンドボックスの CPU とメモリの単価は次のとおりです。

課金の対象単価
サンドボックスの CPU1 vCPU 時間あたり 0.0994 USD
サンドボックスのメモリ1 GiB 時間あたり 0.0118 USD

次の点に注意が必要です。

  • モデルの推論と、別料金のツールや接続サービスには、それぞれの料金がかかります
  • 発表ブログは、価格が地域や契約で変わりえると書いています
  • サンドボックスの CPU とメモリの設定は、Foundry が管理します。制限のページでは、利用者が変えられないと書かれています

サンドボックスが何時間稼働するかは、作業の内容と会話の数で変わります。参照した公式の資料には、実行時間の見積もり方が書かれていません。そのため、この記事では月額の試算を書きません。無料の間にトレース (Foundry の応答の記録) で何が呼ばれているかを確認し、12 月 1 日までに予算の枠を決めるのが現実的です。なお、Foundry Agent Service の料金ページには、10 月 30 日時点で harness の項目がありません。実額は、契約と料金ページの更新で確認してください。

Copilot SDK は Microsoft Copilot SDK になる

GitHub の Copilot SDK の README の冒頭に、「GitHub Copilot SDK is becoming Microsoft Copilot SDK」と書かれています。Microsoft Copilot harness のプログラム用インターフェースという位置づけです。

移行は段階的です。README が書いている要点は次のとおりです。

  • リポジトリは、Microsoft の組織へ移ります
  • 既存のパッケージ名、名前空間、一部のドキュメントは、旧称のまま残りえます
  • 既存の利用者に、直ちに必要な変更はありません

README に載っている言語ごとの導入方法は、現時点で次のとおりです。

言語導入方法
Node.js/TypeScriptnpm install @github/copilot-sdk
Pythonpip install github-copilot-sdk
Gogo get github.com/github/copilot-sdk/go
.NETdotnet add package GitHub.Copilot.SDK
Rustcargo add github-copilot-sdk
Javacom.github:copilot-sdk-java (Maven)

パッケージ名をいつ変えるかは、README に書かれていません。依存を固定している場合は、README と各言語のパッケージの更新に気づける状態にしておくと安心です。

BYOK と BYOM は別の話

README の FAQ には、Copilot SDK が BYOK (利用者の API キーの持ち込み) に対応すると書かれています。ただし、キーによる認証のみで、Microsoft Entra ID、マネージド ID、外部の ID プロバイダーは対象外です。対応するプロバイダーの例として、OpenAI、Microsoft Foundry、Anthropic が挙がっています。

Microsoft の公式ブログの発表も、harness が 20 以上のフロンティアモデルと BYOK に対応すると書いています。一方、Foundry の harness の制限ページでは、独自モデルの持ち込み (BYOM) は未対応です。モデルは、推論とツール呼び出しに対応し、プロジェクトのリージョンでプロンプトエージェントに使えるものから選びます。Foundry の harness で API キーを持ち込めるかは、Learn の使い方と制限のページに書かれていません。Copilot SDK で使えることと、Foundry の harness で使えることは、別々に確認してください。

プレビューを業務で使う前の確認項目

Learn の使い方のページには、プレビューの機能は本番環境での利用を勧めないと書かれています。サービスレベル契約 (SLA) もありません。業務で使う前に、次の点を確認してください。

  1. プロジェクトのリージョンが、対応リージョンに入っているか
  2. 使うモデルとツールが、そのリージョンで使えるか
  3. 呼び出し側が、conversation を使い、未対応の項目を指定していないか
  4. 大事な出力を、Foundry Files などの永続的な場所に保存しているか
  5. シェルを含む組み込みツールのうち、不要なものを無効にしているか
  6. 12 月 1 日からの課金を、予算の枠に入れたか
FIXITFIXIT

プレビューなら、無料の間にとりあえず試せばいい?

TsumikiTsumiki

試す価値はあります。ただ、本番のデータを入れる前に、リージョンと保存先を決めておきたいです。

FIXIT の運用|実行基盤は任せる範囲を先に決める

AI 駆動開発のクリエイティブスタジオである FIXIT では、エージェントの実行基盤を選ぶときに、動かす場所、権限、課金の 3 つを先に整理することを勧めています。マネージドの基盤は運用が軽くなる一方、対応するリージョンやモデル、使える機能は提供元に決められます。

本記事は公式情報に基づく解説です。FIXIT による Microsoft Copilot harness の検証結果や、導入実績を示すものではありません。

まとめ

Microsoft Copilot harness は、Foundry Agent Service のプロンプトエージェントで、実行基盤を Foundry に運用してもらうためのプレビュー機能です。作成時にだけ選べ、既存のエージェントには追加できません。ランタイムは 12 月 1 日より前は無料で、12 月 1 日からはサンドボックスの CPU とメモリに従量課金がかかります。

Copilot SDK の改称は、いま急いで対応する必要はありません。公式の README が、既存の利用者に直ちに必要な変更は無いと説明しています。次の一歩は、リージョンとモデルの条件を確認し、12 月 1 日の課金前に、試す範囲と予算の枠を決めることです。

エージェントの実行基盤の選定や、チームでの運用設計を整えたい場合は、AI エージェント開発 や AI 開発ツール定着支援 をご覧ください。現在の環境を踏まえて相談したい場合は、お問い合わせ からご連絡ください。エージェントをコードで管理する別の SDK は Cursor Agent SDK の使い方 に、ツールの比較は Claude Code・Cursor・GitHub Copilot の比較 にまとめています。