結論|日本からは商用で使える。手元に置けるのは 768p の H3-Base まで

MiniMax H3 は、テキスト・画像・動画・音声を入力にして、ステレオ音声つきの動画を生成するモデルです。2026 年 8 月に重みが公開されましたが、公式資料を読むと「オープン」の範囲は限られています。

  1. 日本はライセンスの適用地域です。重みの対象外は EU・英国・韓国・米国で、API は全世界で提供されています
  2. 重みで手に入るのは 768p の H3-Base だけです。入力を整える H3-Context-IR と、2K に仕上げる H3-Regenerate-2K は API でしか使えません
  3. TaoMate-H3 は 4 か 8 GPU の単一ノード (検証済みは 8×H20) で動かす実行環境で、公開済みの LoRA はテキストから生成する T2AV 版だけです

動画制作を発注するなら、「重みか API か」「出力をどの国で配信するか」を制作側に確認してください。ライセンス上の扱いがこの 2 点で変わります。

数値は公式資料と出典を明記した第三者の測定値で、FIXIT の計測ではありません。LLM で同じ判断をした記事は オープンウェイト 3 モデル比較 です。

MiniMax H3 とは何か

MiniMax は 2026 年 7 月 31 日に公式ブログで H3 を発表し、ライセンス文書の日付は 8 月 2 日です。Hugging Face のモデルカードによると、H3 は 3 つのモジュールでできています。

  • H3-Context-IR は、複数の入力の関係を読み取って H3-Base が扱いやすい表現に変換する前処理です。複数のホスト型サービスを組み合わせているため公開対象外で、API と自前で組むための手引きが提供されています
  • H3-Base は、768p の動画と音声を生成します。重みが公開されたのはこの部分です
  • H3-Regenerate-2K は、768p の結果と元の入力から 2K で再生成します。「準備ができたら公開する」とされ、API だけで提供されています

モデルカードは、最終品質に大きく関わるとして H3-Context-IR の利用を強く推奨しています。重みだけで手元に完結させると、公式の品質を再現する前提から外れます。 生成の中核は 33B パラメータの dense な Transformer で、公開チェックポイントは CFG 蒸留済みです。

項目仕様
出力の長さ4〜15 秒
出力の解像度短辺 768px が既定。2K は H3-Regenerate-2K で生成
フレームレート・音声24FPS・32kHz ステレオ
会話の言語日本語を含む 11 言語を安定してサポート
アスペクト比21:9・16:9・4:3・1:1・3:4・9:16 など

チェックポイントは、テキストや先頭・末尾フレームから生成する FL2VA と、複数素材を参照する Ref2VA (画像 9 枚・動画 3 本・音声 3 本、合計 12 ファイルまで) の 2 つです。

発表ブログとモデルカードにはベンチマークの数値がなく、発表ブログは GPU 要件にも触れていません。価格は「2K の秒単価は主流モデルの 3 分の 1 未満」と主張していますが、比較対象のモデル名は示していません。第三者の集計では、上位の解説記事でも引用されている Artificial Analysis が General Quality の Elo を 1302.19 と表示していました (2026 年 9 月 17 日の取得時点の値で、変動します)。

ライセンス — 必須と推奨を条文で分ける

重みの利用条件は「MiniMax H3 Community License Agreement」(許諾者は Nanonoble Pte. Ltd.) で定められています。

注意

以下はライセンス文書を読んだ整理で、法的助言ではありません。案件ごとに法務の確認を取ってください。

日本は適用地域。API は全世界で提供

ライセンスの適用地域は全世界から EU・英国・韓国・米国を除いた範囲で、日本は含まれます (I.3・I.5)。ライセンスの Q&A によると、地域を絞ったのは重みの配布だけで、API は MiniMax が安全対策をかけられるため全世界で提供しています。

必ず守ること

条項内容
IV.1商用製品・サービスの年間売上が 2,000 万米ドルを超えるなら、事前の書面許諾を得る
IV.2商用製品・サービスの UI に「MiniMax H3」を目立つ形で表示する
V.3H3 やその出力を、H3 とその派生モデル以外の AI モデルの改善に使わない
AUP 12公開環境に出すコンテンツは、機械生成であることを明確かつ目立つ形で開示する
AUP軍事利用、同意のないなりすまし、重要分野での高リスクな自動意思決定などの禁止

出力で学習して H3 に似た振る舞いになったモデルは、定義 (I.11) 上 H3 の派生モデルとして扱われ、このライセンスの条件がかかります。扱いは法務に確認してください。

重みを第三者に配布する場合は、重みを受け取る第三者と、関連する製品・サービスの利用者にライセンスの写しを渡すこと (III.1)、改変したファイルへの明示 (III.2)、NOTICE ファイルの添付 (III.4。ホスト型サービスは対象外) も条件です。

推奨にとどまること

III.3 は「encouraged」、つまり推奨です。「Powered by MiniMax H3」の表示、ファイルへの AI 生成識別子の付与、技術ブログなどでの発信の 3 つで、国内にはこれらを義務と紹介する解説記事もあります。

FIXITFIXIT

「Powered by」を付けておけば、表示の義務は済むってこと?

DodaiDodai

Powered by は推奨の III.3 です。UI の表示義務は IV.2 で、根拠が違います。

FIXITFIXIT

じゃあ、AI で作ったって表示もそれで済むの?

DodaiDodai

足りません。公開する動画には、AUP 12 の機械生成の開示が別に要ります。

生成機能を社外に提供する場合と、海外で使う出力

自社サービスに H3 の生成機能を組み込み、利用者に使わせる場合は、IV 章の義務に加えて、V.2 と V.5 の義務がかかります。

  • V.2: 使わせる前に、V 章と利用規定と同等以上の制限を課す規約で利用者を拘束し、制限を通知する
  • V.5: 違反や権利侵害を防ぐ対策を提供前から実装・維持・見直しし、通報窓口を設け、通報があれば調査して止める

V.4 は、適用地域の外で MiniMax H3 Works やその出力を使用・複製・改変・配布・表示してはならないと定め、そうした利用はライセンスで許諾されないと明記しています。日本で生成した広告動画を米国や EU の配信面に出すことが「適用地域外での表示」に当たるかは、条文だけでは判断できず、公式の Q&A も触れていません。完成動画だけを納品する使い方に IV.2 の UI 表示義務が及ぶかも、条文からは読み取れません。

法務に確認するときは、次の点を並べて渡すと話が早く進みます。

  • 重みを自社で動かすのか、API を使うのか
  • 出力を配信・表示する国と地域
  • 生成機能を社外の利用者に提供するか
  • 生成物を他の AI モデルの学習に使う予定があるか
  • 準拠法は香港特別行政区法で、紛争は香港の裁判所の専属管轄 (IX)

MiniMax は、生成された出力に権利を主張しないとしています (VI.4)。なお、出力とその利用の責任は利用者が負います。

手元で動かすのに必要な GPU とディスク

FL2VA のチェックポイントは合計約 144.1GB (134.2GiB) で、テキストエンコーダ (Qwen3-VL-32B、Apache 2.0) と transformer がそれぞれ約 66GB です。Ref2VA を使うなら別途ダウンロードします。

モデルカードの起動例は SGLang で 4 GPU を使う構成で、型番の指定はありません。SGLang の手順書は、B200・B300・H200・H100 などの GPU ごとに検証済みの起動設定を載せています。モデルカードは推論フレームワークとして SGLang・vLLM・diffusers・ComfyUI を案内しています。

コンシューマ GPU はオフロードで動く

SGLang の手順書によると、61.7GB の DiT はコンシューマ GPU 1 枚に常駐できず、レイヤー単位でホストのメモリやストレージとやり取りするオフロード実行になります。

実測では、RTX 5090 (32GB)・ホスト RAM 60GB の実機で、864x480・124 フレーム (約 5 秒)・20 ステップが 1 リクエスト約 112 秒でした (同条件の ComfyUI は 140.9〜145.9 秒)。VRAM を 16GiB に制限すると約 250 秒、12GiB に制限すると約 235 秒で、1 ステップの時間は RTX 40 シリーズでの測定です。

これらはすべて 480P 基準で、768P では常駐レイヤーをさらに減らす必要があるとされ、768P・15 秒の生成時間は公式資料からは読み取れません。

第三者の報告では、ASCII.jp の新清士氏の記事 (2026 年 8 月 17 日) が、筆者の RTX 4090 で 1248×832・15 秒の動画に約 20 分かかり、SageAttention と Turbo LoRA でステップ数を 8 に減らすと 9 分 45 秒ほどに縮んだと書いています。

API で使う場合の料金

MiniMax Open Platform の従量課金 (Pay as You Go) の定価です。いずれも米ドル建てで、2026 年 9 月 17 日に確認しました。

区分定価
H3 の 768P / 2K 出力1 秒 $0.08 / $0.13
H3-Max の 480P / 768P 出力1 秒 $0.05 / $0.08
Regeneration (768P → 2K)1 秒 $0.05 (元の入力素材も再課金)
Context-IR100 万トークンあたり入力 $0.90・出力 $3.60

H3 の入力素材は、音声が無料、画像は 6 枚目から 1 枚 $0.04、参照動画は秒数 × 出力の単価です。H3-Max は fal.ai が H3 を追加学習したモデルで、MiniMax の API ドキュメントは、H3 より速く生成すると説明しています。

ケース計算金額
15 秒・768P15 秒 × $0.08$1.20
15 秒・2K15 秒 × $0.13$1.95
15 秒・768P → 2K 化$1.20 + 15 秒 × $0.05$1.95

入力素材が無料枠内なら、2K 化の経路も直接 2K で作るのと同額です。H3-Context-IR は、モデルカードの 10 秒の作例で約 $0.016 と小さい額です。料金は改定されうるため、見積もりの前に公式の料金ページを確認してください。

API かセルフホストか

オープンウェイトでも、自社の GPU に置くほうが得とは限りません。

判断軸API が向くセルフホストを検討する
2K が要るか2K で納品する768p で足りる
出力をどこで使うか除外地域の組織が使う適用地域内で完結し、法務と確認済み
素材を外部に出せるか外部送信に制約がない未発表の製品写真など、出せない素材を使う
生成量月ごとに大きく変わる、試作段階大量の生成が継続して見込める

セルフホストでも公式品質に近づけるには、H3-Context-IR の API を使うか前処理を自前で組む必要があり、API を使えば入力は MiniMax に送られます。

どちらを選ぶ場合も、次の使い方には向きません。

  • 15 秒を超える動画を 1 回で生成する
  • 2K をセルフホストだけで作る
  • 生成物を他の AI モデルの学習データに使う

海外の配信面に出す広告は、この一覧に入れていません。海外の配信面への掲載が適用地域外での表示に当たるかを、公式が示していないためです。試作の前に、どちらで動かすか、出力を誰がどこで使うか、生成機能を社外に開くかを決めておくと、後からの手戻りを減らせます。

TaoMate-H3 — MiniMax H3 上のストリーミング実行環境

TaoMate-H3 は、Alibaba の TaoLive AIGC チームが公開した、MiniMax H3 と 3 ステップの LoRA による低遅延のストリーミング音声・映像生成の実行環境です。公開済みは T2AV の LoRA とコードで、FL2AV 版は 2026 年 10 月 15 日より前に公開予定、Ref2AV 版は未定です。

H3 の FL2VA チェックポイントを使い、ライセンスも H3 本体と同じです。実行環境は 4 か 8 GPU の単一ノード (検証済みは 8×H20 96GB) 向けです。

速さの数字はどの条件か

README の性能表は、開発チームが 8×H20 の 1 ノード (TP2 × Ulysses4)、480x864・10 秒の出力で素の MiniMax H3 と比べた値です。

指標TaoMate-H3MiniMax H3
最初に再生できる動画まで17.3 秒183.3 秒
DiT の処理時間14.8 秒169.6 秒

「最初に再生できる動画まで」は VAE のデコードと H.264 の書き出しを含み、DiT の処理時間は読み込みやデコードを含みません。いずれも Stage3 の生成経路の値で、コマンド内部の音声準備は含みません。4 GPU 構成の値は載っていません。

注意

「35 FPS」「30 分超」を TaoMate-H3 の特徴として紹介する記事がありますが、TaoMate-H3 の README と Hugging Face のモデルカードには書かれていません。出どころは TaoMate 本体のプロジェクトページ で、TaoMate 本体は LTX-2.3 の重みを使う 22.1B パラメータの別の構成です。

家庭の GPU で使う場合

README の実行環境は、--gpus に 4 か 8 しか指定できません。テクノエッジの松尾公也氏の記事 (2026 年 9 月 14 日) は、LoRA だけを ComfyUI で読める形式に変換し、RTX 5090 1 枚で使った第三者の 1 例です。832×480・5 秒の生成は、4 ステップの FastH3 が 22〜25 秒、TaoMate-H3 の LoRA が 15〜19 秒でした。アバター対話は応答まで約 14 秒で、リアルタイムには届かなかったと報告しています。

FIXITFIXIT

ライブ配信のアバターに、すぐ使えるってこと?

DodaiDodai

まだです。公開済みはテキストからの生成だけで、実行環境は複数 GPU が前提です。

FIXITFIXIT

じゃあ今は何を見ておけばいいの?

DodaiDodai

FL2AV 版の公開と、4 GPU での性能値です。出てから判断しても遅くありません。

まとめ

試す順番は、API で自社の用途の品質を確かめるのが先で、セルフホストは素材を外に出せない、生成量が多いといった理由がはっきりしてからで十分です。768P で候補を作り、選んだものだけを 2K にすれば、2K 化の費用を選んだ本数分に限れます。

FIXIT への相談

業務に組み込む AI エージェントの設計と実装は AI エージェント開発 で、生成 AI の利用ガイドライン整備は 情報セキュリティコンサル で支援しています。MiniMax H3 のような生成モデルの組み込み方を整理したい場合は、お問い合わせ からご相談ください。

参考リンク

いずれも 2026 年 9 月 17 日に確認しました。